難しい競馬用語を通っぽく使うためのまとめ

難しい競馬用語を通っぽく使うためのまとめ

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あ行
アーニング・インデックス
いわば種牡馬の偏差値。算出法は、まず種牡馬の産駒の獲得賞金を産駒数で割る。それから、すべての出走馬の平均収得賞金を1.0とした場合、その種牡馬の産駒の平均収得賞金がどれくらいになるのか、計算する。つまり、1.0よりこの数値が大きくなればなるほど、その種牡馬の産駒が効率よく稼いでいることになる。

青ランプ(あおらんぷ)
交通信号では「安全、進め」の意味だけど、競馬用語では、どう言うわけか、レース中に進路妨害や落馬など問題が発生したと判断された瞬間に点灯するランプを指す。審議ランプとも呼ばれ、掲示板に「審」の文字が灯り、レース後、審議を告げる場内アナウンスが流れるからすぐにわかる。 審議の結果、異常がなければ、赤ランプで確定を示す「確」の字が掲示板に灯り、着順変更があれば、赤青半々のランプと「確」の字が灯る。

煽る(あおる)
レースのスタートで、ゲートが開いた瞬間タイミングがあわなくて、出遅れてしまうこと。「スタートで―」

赤いリボン(あかいりぼん)
パドックなどで前髪や尻尾の根元に赤いリボンをつけた馬をたまに見かけると、「あの馬可愛いね」などという女性ファンの声が、どこからともなく聞こえてくる。競走馬にとって赤いリボンは、噛み癖(前髪につける)や蹴り癖(尻尾の根元につける)のある馬だけにつけられるもので、危険だから注意が必要という警告の意味なんだな。 いいだろう。

上がり(あがり)
レースの最後の600メートルのこと。

上がり馬(あがりうま)
トントン拍子に出世した馬。下のクラスのレースから、あっという間に上のクラスに上がっていった馬。

上がり目(あがりめ)
調子の上がっている馬や、 1着、2着を繰り返し取るほどの好調を維持している馬に対して、「あの馬、上がり目だね」というように使う。短期間のうちに、下級条件クラスからオープンクラスに挑戦するほどの出世をはたした馬は、上がり馬と呼ばれる。しかし、一般的に「馬の好不調は2、3ヶ月」と言われており、上がり馬をいつまでも追い続けるのは危険とされている。

朝日杯フューチャリティステークス(あさひはいさんさいすて―くす)
12月上旬に、中山競馬場の1600メートルで争われるこのレースには、東西トップクラスの2歳牡馬、せん馬(気性が激しいため去勢された馬)が一堂に会すため人気も高く、翌年のクラシック戦線を占う意味でも、非常に興味深いレースだと言える。

脚色(あしいろ)
馬の走りっぷりのこと。「―がいい〔のびのびと走っている状態〕」

脚が上がらない(あしがあがらない)
バテバテになって、一生懸命走っていても思うように前に進まない状態を指す。 前半をハイペースで飛ばした逃げ馬や先行馬、道悪で脚を取られて体力を消耗し切った馬などが、往々にして直線でバタバタになり、この状態に陥ることが多い。

脚元がパンとする(あしもとがぱんとする)
4、5百キログラムにも及ぶ体重を支え、時速60キロのスピードで走る競馬馬の脚には、それはもう、ものすごい負担がかかっている。だから、レース中やキツ目の調教中などに、脚部を痛めてしまうことも少なくはない。そのような、故障や病気によって脚の不調を訴えていた馬が、すっかり完治し、元気に走れるようになることを、「脚元がパンとする」と言う。

脚抜きが良い(あしぬきがよい)
馬が走りやすい馬場(芝・ダート)の状態のこと。優勝した馬は早いタイムを記録することが多い。「―馬場で、レコードタイム」

脚を余す(あしをあます)
全力を出し切らないままに、レースを終わってしまうこと。脚を残すとも言い、「脚を余(残)して負ける」というふうに使う。 スローペースにはまらた追い込み馬や、馬込みにもまれて思うようなレースができなかった馬などによく見られるパターン。

汗取り(あせとり)
「汗取りをかける」というような言い回しで用いる。 つまるところ、競走馬のダイエットだな。

アタマ
競馬において「アタマ」という言葉が使われる場面は大きく分けて2種類ある。1つは着差を表す「アタマ差」のアタマ。そしてもうひとつは、レース前の予想において「アタマはトップガンでテッパン」などと使うアタマ。つまり単勝における1着馬や連勝における1着か、少なくとも2着に連対する可能性の高い軸馬(もちろんあなたの思い込みで0K)を指して使うのだ。

当て馬(あてうま)
種馬が母親となる肌馬(繁殖牝馬)に種付けをする際、肌馬の発情状態を試し、興奮させるためにあてがわれるかわいそうな牡馬を指す。

穴馬(あなうま)
「穴馬」っていうのは人気薄で連対すると高い配当が期待できる馬をいう。別名、惑星馬とかダークホース、伏兵、あるいはシンプルに穴という呼ばれ方もする。 新聞の予想欄で▲や△がついているから競馬初心者でもすぐにわかるはず。 この穴馬のなかにはふたつのタイプがある。そのひとつは大差負けが続き、連勝の軸にするほどの信頼感はないが、もともと潜在能力は高く、まれに先頭でゴール板を駆け抜けるタイプの馬だ。この穴馬は単勝で狙われることが多く、単穴と言われる。 これに対して、1着するにはやや力不足だが、負担重量の軽さから、または馬場が渋ったから、はたまた天変地異の前触れか、ともかく何かのはずみで2着する可能性があるタイプの馬もいる。こうした馬は連複で買われるために、連穴とか連下などと呼ばれる。

穴場(あなば)
馬券発行窓口の俗称。事故や犯罪防止のために、馬券はガラス越しで売るようになっている。

アブミ
騎手が馬に乗るときに、自分の体を固定させるため、足を掛ける金具のこと。 軽量鋼でつくられている小さなものだけど、騎手にとってはさまざまな状況に対応しながら、馬上でバランスをとるうえできわめて重要な役割を果たす。アブミ革とは、鞍からこのアブミを吊り下げている革のことを指す。

アラアラ
馬が全力を出し切り、走れなくなった状態を指し、「アラアラになる」というふうに使われる。さらにひどくなるとバタバタになる。

洗い場(あらいば)
いわば馬のシャワールーム。たいていの洗い場は、屋根付きコンクリート敷きで、蛇口とホースが備え付けられている程度のもの。運動した後、馬はここで汗を洗い流し、ブラッシングや蹄の手入れをしてもらう。

アラブ
アラビア半島一帯、いわゆる中近東を原産地とする馬たちのことを指すのだ。サラブレッドの大始祖であるダーレーアラビアン、バイタリーターク、ゴドルフィンアラビアンも、実はアラブ馬なんだな。この3頭の馬が18世紀に英国に輸入され、英国の牝馬と配合されて、サラブレッドの誕生とあいなったというわけ。 悲しいことに平成7(1995)年をもって中央競馬ではアラブ馬のレースを中止してしまった。 このアラブ馬の特徴と言うと、なんといっても丈夫なこと。馬体重が500キロを越える大型馬は少なく、400キロ前後の小型馬ばかりだが、馬力に優るアラブ馬はサラブレッドに比べて負担重量を苦にしないと言われる。 現在、こうしたアラブのレースを見るには、日本では地方競馬場にいかなければならない。だが、それすら純血のアラブ馬が出走しているというのではない。純血アラブ馬の競走というのは世界中でアメリカとトルコの2ケ国だけでしか行われていないんだ。日本で走っているのはサラブレッドとアラブを交配していながら、アラブ血量が25パーセント以上ある馬なのである。この馬の正式名称ファングロアラブ。血統欄には短縮して「アア」 と表記され、サラブレッドの「サラ」、アラブの「アラ」と区別できるようになっている。

有馬記念(ありまきねん)
1年最後のGIレース、有馬記念。 春シーズンの締めくくりとして阪神競馬場で行われる宝塚記念同様にファン投票で出走馬が決まり、その年の3歳馬と古馬のオールスターによるドリームレースが中山競馬場の2500メートルを舞台に繰り広げられる(ファン投票で10頭、JRA推薦馬6頭)。 そもそも、有馬記念は昭和31(1956)年の中山グランプリという名称のレースがその始まり。当時、JRAの理事長だった有馬頼寧氏がプロ野球のオールスター戦からヒントを得て創設したものだった。ところが、翌年、有馬氏が急逝。これに伴い、「有馬」の名前を戴いて、現在のレース名となったのである。

歩く(あるく)
競馬のレースは、馬が疾走している歩様を表すギャロップ(襲歩=しゅうほ)で争われるが、最後の直線では疲れてバタバタになってやっとのことでゴールにたどりつく馬も少なくない。このような馬を「歩いている」と形容する。 ハイペースで飛ばした逃げ馬や、レース中にどこか体調に異常をきたした馬、ソラを使って走る気を完全に失っている馬、などによく見られる。

併せ馬(あわせうま)
調教のときに、他の2、3頭といっしょに馬を走らせること。

あんこ
見習い騎手の総称で、あんちゃんとも呼ばれる。「見習い」が取れるまでは1人前の騎手としては認められないぞという勝負の厳しさを感じさせる言葉だな。 見習い騎手の正確な定義は、免許取得から3年未満で通算勝利100勝以下の騎手。一般レースに騎乗する場合に限り、通算勝鞍が20勝以下は3キログラム、30勝以下は2キログラム、31勝以上は1キログラム、それぞれ負担重量から軽減されるため、減量騎手とも言われる。出馬表では、20勝以下が▲、30勝以下が△、31勝以上が☆で表示される。

息を入れる(いきをいれる)
レースの途中に走るペースを落とすこと。

1番時計(いちばんどけい)
競走馬が日常行っている練習を調教(またはケイコ)というが、その調教でタイムを計ることを時計を出すという。この調教タイムの中で、その日、その週で1番早いものを「1番時計」と呼ぶ。調教の方法にもいろいろあるが、最も重要なのがレースの3日前か4日 前(水曜日か木曜日、この日を追い日という)に行われる追い切り(または攻め馬)」である。追い切りはトレーニングセンターにある調教コースで実戦さながらのスピードで行われる。そのため、追い切りで1番時計が出ることが多い。 だいたい追い切りといっても様々なケースがある。単走の場合あれば、併せ馬の場合もある。「一杯」に追ったか、それとも「馬なり」か「強目」かでも時計の出方は違う。またダートと芝、ウッド、坂路の違いもあるし、騎乗したのが騎手か調教助手かでも違う。馬場状態や内外のコース取りによってかなり異なったタイムとなる。

行った行った(いったいった)
逃げていた馬と、2番手につけていた馬がそのまま1、2着(逆も可)でゴールインすること。「行った行ったで決まった」というふうに使う。行ったままとか行ったきりとも言う。 実力や人気のある逃げ・先行馬で決まった場合にはあまり使われず、有力どころの差し馬や追い込み馬がお互いに牽制し合うなど展開のアヤで生じたときに使うケースが多い。

一杯(いっぱい)
①レースで、始めに全速力で走ってしまったため、最後の方で息切れしてしまうこと。 「逃げ―〔スタートから逃げた(先頭に立った)が、最後まで息が持たず負けてしまうこと〕」=歩く
②調教中、馬にムチを入れて、全速力で走らせること 

1本かぶり(いっぽんかぶり)
出走馬の中の1頭が圧倒的な人気を集めていること。 新聞の予想欄でも◎のくし刺し状態だからひと目でわかる。単勝のオッズで見ても、1.1~1.3倍と限りなく元返しに近い。

イレこむ
レースの前、パドックなどで、馬が興奮していること。「イレ込みがきつい」

イレッポ
馬が興奮したり、落ち着きを欠いているような状態のこと。イレ込み(む)、チャカつき(く)とも言う。馬券戦術で大切なのが、この「イレッポ」と「気合のり」をどう区別するかだが、パドックなどで首を激しく上下に振ったり、夏でもないのに汗がしたたり落ちていたりしたら、まずイレッポだと思っていい。また、たとえパトックで落ち着いていても、股の間などが白くなっている(汗が乾いた跡)馬を見つけたら、馬運車の中や装鞍所で、もうさんざんイレ込み続けていた証拠だから注意したい。興奮状態がひどくなると、歩いている途中で倒れちゃったりする馬もいるのだ。

インブリード
近親交配のこと。競馬では5代前までに同一の祖を持つ交配を指す。 この反対がアウトブリードで、血統の5代前までに、同一の祖先を持たない交配を言う。このケースは異系交配とも呼ばれるが、実例は意外に少ない。 近親交配は、人間では劣勢遺伝の面ばかりが強調されてタブーになっているけど、サラブレッドでは優秀な馬が生まれることが多い。インブリードの効果は、一般にその血脈の特徴を際立たせるもので、スピードを伝える、勝負根性を増す、などの効果が経験的に知られている。

ウィナーズサークル
重賞や特別戦のレース後に優勝馬や騎手、馬主など関係者の表彰式や記念撮影が行われる場所。馬に係わる人間はもちろん、たとえ一介の競馬ファンあっても一生に1度は、このサークルで愛馬の手綱を持って写真を取はないられるところを夢見るものである。 ところで、このウィナーズサークルは、どの競馬場でもゴール板の前付近にあり、スタンドからもよく見ることができる。そのため、ひいきの馬や騎手に祝福の言葉を送りたいファンたちが集まってくる。

薄目ヘ抜ける(うすめへぬける)
馬券で頭は本命サイドで固かったものの、人気薄のヒモ(2着馬)が絡んで高配当となることを言う。いわば、本命党が地団太踏むケース。

ウッドチップコース
ガラスの脚を持つと言われるサラブレッド。しかし、この脚を鍛えこまなければ強い馬は生まれてこない。そこで美浦、栗東のトレーニングセンター内に作られたのが、ウッドチップコース(短縮してウッドとも呼ばれる)というわけ。 美浦トレセンの場合には、杉の木と赤松のウッドチップ(木屑)、そしてバーク(杉の本の皮)が約5センチほどの厚さに敷きつめられている。このコースの特徴はダートコースよりもクッションがいいこと。つまりサラブレッドの脚の骨の保護には最適なんだな。 しかも、筋肉や腱にはかなりの負荷を与えることができるため、通常のダートコース調教では鍛えることができない部分まで強化することができる。だから、少々脚部に不安のある馬でも十分に調教ができ、レースヘの出走が可能となる。

馬込み(うまごみ)
馬が密集して走っている状態。「― を嫌う〔=他の馬が近くにいると、気が散ってレースに集中できない状態〕」

馬っけ(うまっけ)
男馬(牡馬)がパドックなどで発情すること。3~4歳の若い馬に起こりやすい。

馬なり(うまなり)
騎手がムチなどを入れないで、馬の行く気に任せた状態。「―で好時計〔=騎手がスパートをかけていないのに、速く走ること〕」

馬主(うまぬし)
お馬さんを持っている人、オーナーのこと。馬代金や養育費を全て負担し、入着すれば賞金がもらえる。競馬ファンならだれもが憧れるのが、この馬主なんだよね。 特にダービー馬の馬主になることは、馬主の人たちの中でも最高の夢なんだ。競馬ファンとしても有名な元英国宰相チャーチルは「ダービー馬のオーナーになることは、一国の首相になるより難しい」と言ったとか。 馬主にも共同馬主、法人馬主、個人馬主など種類があるが、いずれも競馬会の登録を行わないといけない。登録には競馬会の審査があり、個人で登録する場合には、競馬という賭け事ゆえに、公正明大な人格を持ち合わせる人でなければならない。さらに経済力は必須の条件だ。だいたい1頭のサラブレッドを所有し、5歳まで走らせるとすると、最低でも3000万円はかかる。これでは一般の人はなかなか手が出せない。 そこで法人馬主の一種であるクラブ馬主が、馬代金を何口かに分けて募集することがある。これに出資した人を1口馬主という。馬主になると競馬の見方もかなり変わるようだ。

馬連(うまれん)
平成3(1991)年に導入され、またたく間に売上げ比率ナンバーワンに輝いた競馬界の大ヒット商品のこと。正式名称は馬番連勝といい、連勝複式馬券の一種類である。 9頭立て以上のレースで、従来の枠番連勝(枠連)と併用して売られている。

裏開催(うらかいさい)
関東または関西の中で、同時にニケ所の競馬場で競馬を開催している場合、メインのほ うを「表開催」、もう一万を「裏開催」と言う。関東では東京競馬場と中山競馬場、関西では京都競馬場と阪神競馬場が裏開催になることは原則としてない。つまり、福島、新潟、小倉といったローカル競馬場がその対象となるわけだな。 たいていの場合、有力馬や有力騎手は表開催のレースに偏るため、裏開催はどうしても地味な存在になりがちだけど、ここで力をつけてのちにGIをとる馬もいるし、騎乗回数が増える若手ジョッキーなどにとっては腕を磨く絶好のチャンスの場になる。

運送屋(うんそうや)
2着が多く、いつもあと1歩で勝てない馬を、荷(=2着)が多いことから「運送屋」と言う。

NHKマイルカップ(えぬえいちけいまいるかっぷ)
5月上旬に、東京競馬場の1600メートルで争われる、3歳牡、牝馬のマイルGI。1996年に新設された。 またダービーに出走権のないマルガイ(外国産馬)の実力馬も出走可能。そのため、開催時期の問題などから、ダービーの格が落ちるんじゃないか、なんて危惧するホースマンもいたが、早熟なマイラーにとって、NHKマイルカップは大きな福音となったんじゃないかな。

エビハラ
競走馬に最も多く発生する職業病の1つで、正式には屈腱炎と言う。脚の骨の後ろ側にある屈腱が炎症を起こし、腫れてエビの腹のようになるため、俗にエビハラまたはエビと呼ばれるのだ。皮肉なもので、スピードがあり、競走能力に長けた馬ほどこの病魔に襲われやすい。治療法としては、患部を焼いて固める焼烙法が一般的だが、たとえ症状が治まっ てもいつ再発するかわからず、腫れ物に触るようにしか調教できないことが多い。 かかると根治はむずかしい。競走馬にとっては致命傷になる最も恐ろしい病気のひとつで、数え切れないほど多くの名馬たちが、この病に屈してターフを去っている。

エリザベス女王杯(えりざべすじょうおうはい)
11月に京都競馬場で開催される牝馬のGIレース。1995年までは3歳の牝馬3冠を賭けたレースだったが、1996年からは、出走規定が3歳牝馬限定から、3歳以上牝馬に変更されたため、最強牝馬を決定するビッグレースとなった。これまでオープン級の牝馬は古馬になると、目標になるレースがなく、5歳になった途端に引退、というケースも少なくなかったが、1996年以降は、このレースが最大の目標となった。

追い切り(おいきり)
レースの前に行われる最終調教。騎手などがまたがって馬を走らせる。レース3~4日前の水、本曜日に行われることが多い。

追い込み(おいこみ)
「追い込み」っていうのは、レースの前半は後方に控えて、最後のコーナーを回った直線で一気にスパートさせる戦法のこと。後方一気ともいう。また、素晴らしい追い込みの脚を鬼脚と表現する。 こうした戦法をとるタイプの馬は、冷静沈着で粘り強い勝負根性がある馬ばかりとは限らない。馬込みが嫌で後ろから行くしかないという馬もいる。いずれにせよ、一発ハマると豪快な勝ち方をして、ホントに気持ちいいものなんだよなあ。 ただ、どうしても逃げ馬や先行馬のペースに左右される傾向は否めない。たとえば全体の流れがスローだったり、仕掛けのタイミングが遅かったりすると、脚を余したまま(余力を残して)、レースが終わってしまう。

桜花賞(おうかしょう)
桜の花咲く4月初旬、クラシック・レースのトップを切って阪神競馬場で開催されるのが桜花賞。ピチピチ、ムチムチの4歳牝馬たちが集い、芝1600メートルに華麗な勝負を繰り広げる。前年暮れの有馬記念以来、久々のGIレースということで、競馬ファンみんなが心ワクワク。

大駆け(おおがけ)
それまでたいした成績でなかった馬が、前走までとは全く違った好走をみせること。 とでも歯が立たないと思われたレースで、大方の予想に反して勝った際、「1世1代の大駆け」といったふうにも使われる。 もちろん、大駆けをきっかけに実力を開花させるケースもあるが、全精力を使い果たしてしまうせいか、大駆けのあとはサッパリという馬が少なくない。馬券戦術では注意したほうがいいぞ。

オークス
昭和32(1938)年、英国オークスを模して作られた「阪神優駿牝馬」が、このレース。東京競馬場の芝2400メートルで、3歳牝馬ナンバワーンの座を争う。 桜花賞から2ヶ月足らずのうちに、なんと800メートルも距離が延長されることから、パワーとスタミナが要求され、4歳の乙女たちには可哀相なぐらい過酷なレースとなる。そのため、桜花賞で強~い勝ち方をした馬が、意外にもあらさりと負けることがある。

オーナーブリーダー
馬主であり、同時に生産者でもある人を言う。 一般の生産者は馬を売って生計を立てているが、オーナーブリーダーは自分で走らせることができるため、生産―育成―レース-繁殖と一貫した信念のもとに馬づくりに取り組むことができる。つまり、高く売るという目先の利益にとらわれることなく、強い馬をつ くれるわけだ。 ほとんどが大牧場の生産者であり、メジロ牧場の北野雄二氏、社台ファームの吉田善哉氏らが有名。

オープン馬(おーぷんば)
競走馬は、収得賞金によって5つのクラス分けが行われる。まず1番下のクラスは新馬戦と未勝利戦。これを勝ち上がると500万下となる。そして収得賞金が増えていくに従って1000万下、1600万下とランクが上がり、1600万円を越えるとオープンとい う格付けがなされる。このオープンクラスにいる馬のことを「オープン馬」というんだな。ただ、馬の年齢によってクラス分けの収得賞金基準は多少変動をする。そのため、レースに勝たないとクラス落ちすることもあるし、たとえ勝ってもクラスの上がらないこともある。競走馬の世界はなかなか厳しいというわけだ。

オケラ街道(おけらかいどう)
競馬場から最寄りの駅に通じる道のこと。競馬で持ち金を使い果たした人たちが肩を落としてトボトボ歩くことから名づけられた。特に中山競馬場のオケラ街道が有名。広辞苑によれば、「オケラ」とは職人の隠語で、バカ、間抜け、阿呆を指すと言う。ちょっと厳しい言葉だ。

オッズ
オッズとは予想配当率のことで、正しくは概算払戻し率という堅苦しい言葉を使う。全投票数における特定の馬券の発売数を計算して、その割合に控除率を加えてはじき出した数値なのだ。この控除率とは、いわゆるJRAの懐に入るテラ銭のことだと理解しておけばいい。 コンピュータの導入によって、オッズの変化は馬券発売締切りまでオッズ板(パドックの横にある電光掲示板)や各場内外の馬券売り場のモニターに表示されるようになった。また、馬連は組み合わせがあまりに多いので競馬場やウインズには、オッズプリンターが設置され、オッズの有料プリントアウトサービスを行っている。これらを見ながら、どの馬券にいくら投資すればいくら儲けることができるかと懸命に考えるのである。

お手馬(おてうま)
騎手にとって相性の良い馬で、その馬の癖などを把握して、好結果を出している馬。 「メジロマックイーンは武豊騎手の―だった」

重の鬼(おものおに)
競馬場には当然雨も降れば雪も降る。もちろんカンカン照りが続くこともある。こうした天候の変化によって、馬場コンデイションも大きく変わっていく。その馬場状態の表現が次の4つ。いい方から言うと良、やや重、重、不良だ。 芝コースでの重は競走馬が走る度に大きな泥を撥ね飛ばすような状態。また、ダートでは砂が真っ黒になるまで水分を含んだ状態を指す。「重の鬼」とは、この悪いコンディションを得意とする馬のことをいうんだな。水たまりや泥なんか屁のカッパ。まったく苦にしないのである。重の鬼はまたの名を道悪巧者ともいい(道悪には不良も含む)、馬場が渋った時はとんでもない大駆けもあるから要注意。

親子どんぶり(おやこどんぶり)
同じレースに、同じ馬主または同じ厩舎の馬が2頭以上出走してきて、1、2着を独占すること。

折り合い(おりあい)
「―がついている〔=騎手と馬の呼吸が合って、騎手の指示どおりに馬が走っている状態。好走している状態〕」

か行
カイバ
馬のエサのこと。漢字で書くと「飼い葉」。千し草や穀物、牧草の育つ頃には青草などがカイバとして与えられる。 カイバには通常、朝のトレーニング後の朝カイバと午後3時~4時頃の夜カイバがある(場合によっては昼にも与えることがある)。このカイバを馬が食べることをカイ食いといい、馬の調子を判断する材料のひとつにもなる。たとえば「カイ食いがいい」といえば食欲十分。ハードな調教を受けた上でのカイ食いの良さは、ヤル気も満々だと判断していいな。 逆に「カイ食いが細い」「カイ食いが落ちる」「カイバがあがる」といえば、馬の食欲が落ちている証拠。

返し馬(かえしうま)
レース前に、パドックから本馬場に入ってきた馬が行うウォーミングアップのこと。

かかる
スタート直後などに、騎手の指示とは裏腹に、馬が速く走ってしまう状態。スタミナが温存できなくて、ゴール前では失速することになる。

格上げ(かくあげ)
馬は収得賞金が増えるに従って能力(自己条件)が決まり、出走できるレースのクラス(格)も上がっていく。 このクラスがひとつ上がることを、「格上げ」と言う。 格上初戦とは昇級後初めてのレースのことで、メンバーが一気に強化されるため苦戦する馬が多い。逆に、「格上初戦をあっさりクリア」する馬は大物と言っていい。 また、競馬では自己条件より下のレースには出られないが、上のクラスのレースには出走できる。このケースが格上挑戦で、クラシックが近くなると、1勝馬にもかかわらず重賞に挑戦する好素質馬も出てくる。

かくあげちょうせん【格上げ挑戦】
上のクラスのレースに出走すること。ただし、出走頭数が多い場合は、除外される。「未勝利からの――〔未勝利クラスの馬が、そのクラスをとびこえて、いきなり500万下、1000万下などのレースに出走すること〕」

格の違い(かくのちがい)
馬の格というのは普通、その実績から判断されることが多い。中央競馬では500万下、1000万下、1600万下、オープンというクラス分けがされていて、これがその馬の「格付け」ということになる。だから、1600万下の馬が、オープンレースに出走してきても、やはりオープン馬とは「ぜんぜん格が違うよ」なんて言われてしまう。

角馬場(かくばば)
角馬場と言っても、コーナーが角張った4角形や3角形の馬場のことではなく、追い運動に使う全長200~600メートルのミニコースを指す。故障明けの馬や気性の激しい馬などが、本コースに出る前のウォーミングアップ用とするケースが多いほか、2歳馬などの初期の調教などにも使われる。いずれにしても、角馬場で本格的な調教が行われるわけではない。

過剰人気(かじょうにんき)
馬の能力以上に人気が集まることを指す。 馬券はたいてい予想紙の人気に従って売れていくが、それ以上に人気がかぶるにはそれなりの理由があるはずだ。もちろん、競馬関係者は馬券を購入することを禁じられているけど、事情通が大量にその馬の馬券を買っていることも考えられる。そういう馬券は当然、買って損はないはずだ。 ただし、前レースで展開に恵まれ華々しい勝ち方をすると、その印象から能力以上の人気になったりするケースもある。また、血統などが評価されたり、覚えやすい 馬名だったりして、いつでも人気が実力に先行するタイプの馬も少なくない。こういう馬の馬券はむしろ敬遠したほうがいいかもな。

カタくなる
レース前、人気が高くなって、出走馬の厩舎関係者などが力んで緊張すること。

肩の出が悪い(かたのでがわるい)
パドックなどで馬の肩がスムーズに前に出ない状態のこと。肩の出が悪いと、前脚の出方が鈍く、歩幅が狭くなり、後脚の踏み込みも弱くなる。で、そういう馬はたいてい走らないのだ。 原因としては、コズミがあって肩を痛がっているときによく見られる。歩様がなんとなくぎこちなく、パドックでは前の馬の歩調について行けず遅れがちになるケースが多い。そんな馬を見つけたら、まず調子を疑ってみたほうがいいだろう。

かちまけ【勝ち負け】
1着か2着に入ること。「今度のレースは―になる」

カブトヤマ記念(かぶとやまきねん)
昭和8(1933)年のダービー馬・カブトヤマにちなんで名づけられたGⅢレース。父内国産限定の4歳以上のハンデ戦で、芝1800メートルで争われる。

カマシ
出走する馬に興奮剤を与えて気合いを高めること。相手の勢いをそいだり、おどしたりする言葉を浴びせる際に使われる「かます」からきているとみられる。 もちろん、興奮剤は禁止薬物に指定されており、レース後の尿検査で検出されれば失格となり、厳しく処分される。いわば、馬のドーピングのようなもんだな。

体を大きく見せる(からだをおおきくみせる)
パドックなどで普段よりも体が大きく見えたり、馬体重の割に大きく感じたりする馬を見つけたら、それは好調の証と思って間違いない。とくに能力的に遜色がないにもかかわらず人気薄であれば、思い切ってその馬絡みの馬券で勝負してみると面白いだろう。 と言うのは、体を大きく見せる馬は、やる気満々で自信に溢れ、力強い歩様で歩いていることが多いからだ。

ガラリ一変(がらりいっぺん)
今までちっとも勝てなかった馬が、なぜか急に絶好調。本命馬を抜いてまさか、まさかの1着なんていうときに、「うわぁ、あの馬、ガラリ一変しやがったよ」と言う。

仮柵(かりさく)
芝コースの内ラチ(内側の柵)から、7メートルほどの位置に設けられた柵のこと。では、どうしてこんな柵を設けるかっていうと、馬たちは、どうしても内ラチ沿いを走りたがるからなんだ。そりゃそうだよな、なんてったって最短距離なんだから。でも、それゆえに、不良馬場だったりすると、芝コースの最内は荒れ放題となる。そこで、その部分の芝を保護、補修をするために、ある一定期間、この仮柵が設置されるというわけ。 芝が回復して仮柵が外されると、逃げ馬が好走することが多い。それは逃げ馬の特権である最内の馬場状態が他の部分と比べて格段にいいからだ。「仮柵を外した」という言葉にピンときたら、逃げ馬にご用心。

ガレる
馬体重が減り、馬体の線が細くなること。

カンカン場(かんかんば)
カンカンというのは体重計を指す。カンカン場は、カンカンがある場所、つまり、負担重量を計る検量室のことをいう。レースに出場する騎手はここで、鞍、鉛などを持ち、定められた重量で騎乗できるかどうかをハカリに乗って計量するのだ。

カンカンなき【カンカン泣き】
負担重量が苦になり、好走できないこと。「この馬は―する傾向がある」

カンバイ
スタートのやり直しのこと。 発走委員が正しい発走でないと認めた場合に赤旗を振り、それを受けてゲートから200メートルぐらいの地点で大きく白旗が振られる。この白旗を振る係員は、出走後の数秒間は馬群が追ってくるコース内にいるわけで、結構勇気がなければできない役回りだ。

完歩(かんぼ)
馬の歩幅のこと。4本の脚が1度ずつ地面を蹴ったひと跳びを1完歩と呼ぶ。追い込み馬が直線で強襲してきたときなどに、「1完歩ごとに差を縮めてきた」というふうに表現する。 体の大きい馬の完歩が必ずしも大きいとは限らないが、完歩を小さくして脚の回転を速め、スピードをあげるピッチ走法を得意にする馬は比較的小柄な馬に多いと言われるな。

関与禁止(かんよきんし)
日本の競馬界における、最も重くて厳しいペナルティーと言っていいだろう。競馬施行規定第120条に規定されていて、この処分を受けると、死ぬまで一切競馬に関係することができなくなる。たとえば、競走馬の血統を証明する書類を偽造・変造したり、不正に行使した者等、12の項目を犯すと、馬主、調教師、騎手、調教助手、騎手候補者、厩務員に対し、関与禁上が申し渡される。

気性(きしょう)
馬の性格も十馬十色。素直でよく騎手の言うことをきく気のいいタイプの馬もいれば、少々性格に問題アリという馬もいる。この気の悪いタイプの馬を気性難と呼ぶ。 調教では抜群のタイムを出しているから、これだって思って買うんだけど、レース中、突然走る気をなくしてしまったりする。ひどい時には止まっちゃいそうになることだってあるんだよね。いわゆる「ソラを使う」と言われるのが、この状態。新聞のコメントでよく「アテにならない」なんて書かれている。 また、気性難の馬に1番ゲートは鬼門だとも言われる。もともと馬は閉所恐怖症気味なところがあって、狭いゲートなんかに押し込められるのは大嫌い。ゲートインは奇数番の馬から行われるので、全馬が入り終わるまでのわずかな時間もイライラして耐えることができないんだ。だから、ゲート内で暴れてみたり、出遅れたりする。さらに馬込みを嫌がって、最終コーナーで大きく外にふくらむことすらある。

騎乗停止処分(きじょうていししよぶん)
レース中の騎乗やレース後の検量で問題があった場合に騎手に課せられるペナルティーのこと。不正が発覚すると、その翌日あるいは翌週から、最低2日間、あるいは不正内容によって長期間にわたって騎乗ができなくなる。 もちろん、不正を行った馬は失格となり、たとえ1着で入線していても着外扱いとされる。また他馬の進路を妨害して、その馬より先着した場合には、被害を受けた馬の次の着順に降着。被害を受けた馬が落馬などで競走を中止した場合には、妨害した馬は着外扱いとなる。

奇跡の血量(きせきのけつりょう)
血統用語。父(母)方の3代前、母(父)方の4代前の祖先が同じ馬の場合、名馬が誕生しやすいといわれており、この血量のことをいう。 「ノーザンダンサーの3×4 〔父方の3代前と母方の4代前に、ノーザンダンサーがいることを指す〕」

菊花賞(きっかしょう)
英国のセントレジヤー競走に範をとって昭和13(1938)年に創設されたGIレース。3冠の最後を飾り、淀(京都競馬場)の芝3000メートルで行われる。このコースは3コーナー手前から上り、4コーナーにかけて下るという京都名物の坂越えが難所中の難所。「抑えて上り、抑えて下る」の格言を生んだように、この坂でスピードを出すと、長丁場の最後の直線でバテてしまう。ゆえにスピードと底力だけで皐月賞、日本ダービーを制してきた馬が、スタミナ不足からゴール直前になって失速するケースもしばしば見られる。

黄旗(きはた)
スタート直後に係員が振り下ろす旗のこと。この旗が振られた瞬間からレースの走破時計を計り始める。競馬でのタイムはギャロップ(襲歩=疾走する歩様)の状態を計測するのが普通で、JRAの場合はゲートから約5メートルを助走距離としている。つまり、1600メートルのマイル戦であれば実際にはゲートから1605メートルを走っていることになるわけだな。もちろん、ゲートから5メートル先にセンサーが設置されており、馬がその地点を通過すると自動的にスイッチが入り、計測が始まるようになっている。万が一、機械が作動しなかったケースに備えて、決勝審判員も補助的に手動でタイムを取っているというわけ。黄旗を振る係員はこのセンサーの延長線上に立つのが、お約束になっている。

脚質(きゃくしつ)
競走馬が最も得意とするレースでの戦法。専門紙などでは一般的に逃げ、先行、差し、追い込み、自在の5つの分類がなされている。まず「逃げ」は先頭に立ってレースを引っ張るタイプ。もちろん、展開次第では、そのまま逃げきってしまうこともあるが、粘りのない馬は直線でつかまってバタバタになってしまうことも多い。 この逃げ馬をぴったりマークするのが「先行」。この脚質の馬は2~4番手ぐらいの位置につけて最後の直線でさっと抜け出す。大負けすることが少なく、安定感があるから、見ていても安心感がある。「差し」は馬群の中団よりも後方を進み、3コーナーから4コーナーにかけて前へ進出。直線で一気に逃げ馬、先行馬をちょいとかわしてゴールに飛び込むタイプをいう。これがきれいに決まると「ぴったり差しきった」などと言われる。 「追い込み」は差し馬よりももっと後方の最後尾につけ、最後の直線での爆発力に勝負をかける。テレビで見ているとなかなか画面に入ってこないので、こうヤキモキするんだよな。そして最後の「自在」は、レース展開に応じて、どんな脚質でも使えるタイプ。臨機応変に対応できるということは、それだけ馬に力があるとも言える。

脚部不安(きゃくぶふあん)
サラブレッドは走るために生まれてきたと言われることでもわかるように、競走馬にとって4本の脚は大事な商売道具にほかならない。その商売道具が満足に使えなくなる恐れが生じたことを、脚部不安と言う。具体的には、ハ(跛)行、屈腱炎をはじめとする炎症などが発生した場合を指す。

キャンター
日本語だと駈足(かけあし)。ギャロップ(全力疾走)直前の余裕のある走り方のこと。返し馬のときなどには、まずダクで馬の体をほぐし、徐々にキャンターに移行してゆき、そしてギャロップ(全力疾走)に至る。返し馬の見方はいろいろあるが、前脚や肩の動きがぎこちなく、ダクからキャンターヘスムーズに移れないようだったら、その馬はあまり調子がよくないという信号だ。狙い目は、首をまっすぐ、やや下向きにのばして、気 持ち良さそうにキャンターに移行する馬。

急仕上げ(きゅうしあげ)
レースに出走する馬のコンディションを整えることが「仕上げ」であり、短時間で仕上げることを「急仕上げ」と呼ぶ。 中間(レースとレースの間)の乗り込みが不足し、調教本数が極端に少ない状態で出走してくるケースがこれに当たる。とくに、長期休養していた実力馬が目標としていたレースヘの出走にギリギリで間に合った場合などは、急仕上げの可能性が高いと見ていいだろうな。 万全の状態で出走してくれば勝ち負けの馬でも、急仕上げだと凡走する可能性があるため、競馬ファンにとっては、馬券検討時に悩まされることが多い。

厩舎(きゅうしゃ)
調教師がたくさんのお馬さんを管理している場所。トレセン内にある厩舎を内厩、トレセンの外にあるのを外厩という。この厩舎の中の馬房とよばれる長屋のようなところに競走馬たちは住んでいる。 1頭当たりの馬房スペースは、ちょっと広めのワンルームマンションほど。もっとも、キッチンやユニットバスなんかあるわきゃない。馬のご飯であるカイバやお風呂のお世話は全部、厩務員が親切丁寧にやってくれるというわけ。まさにいたれり、尽くせりなんだ。

きゅうしゃコメント
厩舎の調教師、調教助手などが、管理する馬の調子やレースの勝算などについて話したもの。競馬新聞などに載っている。ただし、本音は勝てると思っていても慎重な発言をする人もいるし、逆に自信はないけど強気の発言をする人もいるなど、調教師によって性格はまちまちである。

銀行レース(ぎんこうれーす)
本命と対抗の2頭でほぼ100パーセント決まりと思われるレース。銀行に預けるのと同じぐらい確実という意味。固いことから鉄板レースとも呼ばれる。 銀行レースは馬連でも3倍前後のオッズにしかならないことが多く、貧乏人にとっては食指の動かないレースだけど、資金に余裕のある連中にとっては逆に絶好の勝負レースとなる。今時、銀行に預けたって雀の涙の利子しかつかないのに、わずか数分で3倍になるんだから、おいしいわけだよな。 ただし、統計でみると、1、2着が人気馬同士で決まるレースはせいぜい20パーセントというから、実は銀行レースなんてそうはないのだ。

金杯(きんぱい)
正式名称は中山金杯と京都金杯。1月の第1週に、東は中山競馬場、西は京都競馬場で争われる2000メートルのGⅢレースだ。暮れの中央競馬は有馬記念で幕を閉じるが、年が開けて初めて行われる重賞レースが、この東西の金杯というわけ。「金杯で乾杯」というのが、お約束の売り文句になっている。 その年最初の重賞レースで、しかもハンデ戦で、荒れることで有名なレース。そんなこんなで、ビッグなお年玉を期待して馬券を買う人が多いので、GⅢレースのわりには、注目度が高い。

斤量(きんりょう)
負担重量のこと。

グイッポ
馬が前歯を物に当てたり、歯で物を噛みながら空気を飲み込むクセのこと。さく癖とも言う。癌痛の原因にもなる悪い癖だけど、一説によると、空気を一気に呑み込むことには人知れない快感があり、馬はそれでたまっているストレスを解消しているんだそうな。

クセ馬(くせうま)
騎手の思ったとおりに走ってくれない馬。

口向き(くちむき)
「口向きが悪い」というふうに使う。馬がハミをしっかり噛んでおらず、騎手がうまく馬をコントロールできない状態を指す。この場合、レース中にコースの内側にささったり、外側へよれたりすることが多く、持っている能力を発揮できない。

口取り(くちとり)
一般名詞では、「牛馬のくつわをもって引く」こと。競馬でも、もともとは厩務員が馬を ゲートに誘導したり、ゲート内で馬を抑えることを指していた。 ただし、現在ではレース後に競馬場のウィナーズサークルで行われる勝ち馬と馬主や調教師、厩務員などの記念撮影を言う。並んで手綱を持つことから、「口取り」と呼ばれる。馬主にとっては最高の晴れ舞台であり、至福の喜びを感じる瞬間に違いない。

屈腱炎(くっけんえん)
馬の脚の裏側の屈腱という部分が炎症を起こすこと。「エビ」ともいう(エビの腹のようにはれてしまうことから)。競走馬には不治の病といわれている。「フジキセキは―で引退」

首の上げ下げ(くびのあげさげ)
白熱した追い比べの末に、ゴール直前に首を下げて、ハナ差で勝つような展開。「きわどいレースだったけど、首の上げ下げだったな」なんて呟くと、クロートっぽい。 いくら騎手と馬の折り合いがよくても、さすがに首の上げ下げまで御すことはできないから、そういう微差で勝てるか否かは、ほとんど運まかせ。

クモズレ
競走馬も当然、常に5体満足な状態でレースに臨めるわけではない。「傷の数が勲章」などとは言わないけど、かすり傷のひとつやふたつ負うのはレースでは日常茶飯。クモズレもそのひとつで、馬が走る際、後肢の球節の後下部が地面と擦れてできる傷のこと。パドックなどで馬を真後ろから見たときによく見かける。ひどいときは流血しているケースもあるから大変だよな。

鞍が合う(くらがあう)
「ウマが合う」という言葉があるが、競馬用語ではそういう状態を「鞍が合う」と言い、とくに騎手と競走馬の相性がいいことを指す。

クラシック・レース
競馬のふるさと英国のレース体系にならって戦前に創設された4歳馬の限定戦。桜花賞、皐月賞、オークス、日本ダービー、菊花賞のことを指す。残念ながら春と秋の天皇賞や有馬記念、エリザベス女王杯は、クラシック・レースとは呼ばないんだ。しかも、4歳馬限定のため一生に1度のチャンスしかない。それゆえ、サラブレッドにとってクラシックを勝つことはたいへんな名誉となる。 レース前までまったくの無名馬であっても、クラシック・ホースとなれば知名度もグンと高まる。通常、クラシック・レースの3週間前には、距離や斤量を除いてクラシック・レースと同じ条件の重賞レースが組まれている。これをトライアル・レースといい、こ のレースで入着すれば収得賞金不足の馬でも、クラシック・レースヘの優先出走権が与えられる。

鞍ズレ(くらずれ)
競走馬の背中につける鞍は革製で350~600グラムと軽量。この鞍には騎手が乗る騎座や鞍を固定する重さ1キロ前後のベルト(腹帯)、騎手が足をかける鐙、鞍から鐙をつり下げる鐙革、ゼッケンなどが装備される。だが、このまま馬の背につけたのでは、競走の最中に擦れて痛くなる。そこで鞍下あて、あるいは鞍下毛布と呼ばれる布が敷かれて、鞍と馬の肌との直接の接触を防ぎ、皮膚を保護するようになっている。 ただ、まれに、この鞍が馬肌に合わなかったり、鞍下毛布がずれて、鞍と馬肌が直接触れたりすることがある。これを鞍ズレという。

グリーンチャンネル
グリーンチャンネルとは、競馬専門のチャンネルのこと。CS (衛星放送)かケーブルテレビで受信する。プログラムがひじょうに充実しており、中央競馬の全レースが中継されるほか、競馬年鑑、栄光の名馬たち、今週のレース分析、トレセンリポートなどなど、競馬好きにはたまらない番組が目白押しなのだ。

グレード・レース
グレードというのは英語の「格」を意味する。つまり格のある競走がグレード・レースというわけ。中央競馬には東西合わせて年間3000ほどのレースが行われているが、重賞はわずか100レースあまり。しかも、その重賞の中でさらにG I 、G I 、G Ⅲ という格付けがなされているのだ。 たとえば、もっとも格の高いGIレースにはクラシック・レースや天皇賞、ジャパンカップ、有馬記念などが含まれる。これに続くGⅡにはCIの前哨戦やステップ・レースが、また、GⅢとなるとハンデ戦が多くなるのが特徴。

クロス
ある産駒の同一の祖先が父方と母方の両方の血統に現れていることを指す。 それが近い世代に現れていれば「近親配合(=インブリード)」と呼ばれ、一般的には5代前までに同一の祖先が存在すると定義されている。よく「3×4の近親配合(奇跡の血量)」などと言われるが、この「×」がクロス 。

掲示板(けいじばん)
馬場の内側にあつて着順などを表示する電光掲示板のことをいう。 ここにはレース番号、芝やダートの馬場状態、5着までの着順と着差、勝ち時計、上がり3ハロン、4ハロンの時計、そしてレースの判定が表示される。この判定のところに青ランプがつき、「審」の文字が点減すると、レースが審議の対象になったことを表す。さあ、そうなると着順通りの馬券を持っている人は気が気ではない。 失格や降着などなく、「確」の表示がされるまでの数分間はハラハラドキドキ、心臓がバクハツ寸前となる。また、5着までに入れば賞金がもらえることから掲示板にのることは騎手や馬主、調教師にとってたいへん重要。同じく「確」のランプを待ちわびること になる。

ゲート
出走直前、番号に従って馬が入れられる門。英語ではスターティングゲート、日本語では自動発馬機という。 この自動発馬機が中央競馬に導入されたのは昭和35(1960)年から。それまでは、スタート地点に縄がはられ、出走馬が横一列に並んだところで、縄をつり上げるパリヤー式で行っていた。今から考えると、なんとも風情のある発馬スタイルだったよなあ。 そもそも広い牧場育ちの馬たちは狭い場所を嫌がる傾向があるんだよね。それを訓練によってゲートインさせるようにシツケるというわけ。ちゃんと発馬できるかゲート試験というテストまで用意され、合格しないとデビューはできない。

毛づや(けづや)
いわゆる人間の場合の「肌つや」と一緒。元気のいい馬、気力の充実している馬、つまり走る馬というのは必ずといっていいほど毛づやがいい。だからパドックでは毛づやをしっかりチェックしなくちゃいけない。 毛づやを見るコツというのは、まず必ず日の当たっている場所で見るということ。そして、1頭目から2頭目、その毛づやのいい方と3頭目という具合に次々と比較していき、 1番毛づやのいい馬を探し出す。 ただし、毛ヅヤって、その馬の毛色によって見え方がずいぶん違うんだよな。鹿毛や栗毛は普段から光沢を帯びていてよく見えるし、反対に芦毛はなかなか奥深い光を見ることができない。しかも冬場になると冬毛が生えてくるから、毛づやの判定はさらに難解を極め る。だから、できるだけ近くによってじっくりと観察した方がいい。

気配(けはい)
日本放送協会の元アナウンサーの得意技は「気配り」。 これは「けはい」と読む。その馬の醸しだす独特の雰囲気とかムードということだ。たとえばパドックで毛づやや歩様、踏み込みがよくて、落ちつきはらつた馬を指して「今日は気配がいいねえ」などと眩くと競馬通の風情を漂わすことができる。 また、予想欄がまったくの無印、あるいは×や△が申し訳程度についているにも拘わらず、けっこう馬券が売れている場合、「あの馬は勝負気配だぞ」などと使うこともできる。

顕彰馬(けんしょうば)
JRAが中央競馬に貢献した名馬の栄誉を讃え、功績を表彰する馬のこと。JRA創立30周年記念事業の一環として、昭和59(1984)年9月に創設された。 顕彰馬選考委員会によって選出される制度で、選ばれると競馬の殿堂入りをし、東京競馬場内の競馬博物館に肖像画や像、関係資料などが展示される。馬にとっては「野球の殿堂」入りするのと同じぐらい名誉なことなんだな。そのことは、平成8(1996)年現在、わずか23頭の馬しか選ばれていないことでもわかる。 選考の基準は、9大レースに3勝以上または一般大衆にとくにアピールした馬となっている。

ケントク買い(けんとくがい)
「見得」は「富くじ」や「縁起」の意味。これから想像がつくように、日付やレース名(第○○回)、誕生日、電話番号なんかにこじつけた、根拠の薄い馬券の買い方を指す。

減量騎手(げんりょうきしゅ)
騎手になってから3年未満で、勝利数が100以下の騎手。この騎手が騎乗する場合(重賞、特別戦、ハンデ戦をのぞく)、従来の負担重量が軽減される。その重量は、勝利数によって次のように決められている。▲3 キロ減(~20勝) △2 キロ減( 21勝~30勝) ☆1キロ減( 31勝~100勝) 減量騎手に該当する場合は、▲△☆のマークが、出走表の騎手欄に示される。

検量室(けんりょうしつ)
出走馬に定められた負担重量の検査を行う場所。レース前に行う前検量とレース後に行う後検量がある。

降着馬(こうちゃくば)
レースの最中、もし他馬の進路に著しい妨害を加えた馬がいたら、裁決委員はその馬の処置を審議し、失格や降着のペナルティーを課すことがある。これによって着順が下がった馬を、降着馬と呼ぶ。 降着とは簡単に言えば、加害馬が被害を受けた馬の次順に繰り下げられること。

コーチ屋(こーちや)
競馬場内やWINSで他人にアドバイスして馬券を買わせ、当たると礼金をとる職業の人を指す。

腰がパンとする(こしがぱんとする)
「パンとする」とは、丈夫になるとかしっかりするという意味で使われる。だから、腰の筋力がついてきたり、故障していた腰まわりが完全に治ったときなどに、腰がパンとしてきたねえなんて具合に使うと、ちょっとクロートっぽい。 また、腰のパンとしている馬は、後ろ脚の力がとでも強くて、かなりのスピードが期待できる。パドックで馬をじかに見る機会があったら、そのへんに着目してみるといいんじゃないかな。

コズミ
馬の筋肉痛のこと。脚の運びや身のこなしがぎこちなくなる。

ご当所馬(ごとうしょば)
福島、新潟などのローカル開催のとき、地元の人間が馬主である馬を指す。

古馬(こば)
4歳以上の馬のこと。馬の年齢は数え年だから、生まれた年が1歳で翌年の元日に2歳になる。つまり、この世に生を受けてから、たった3年もたたないうちに、否応なく「古い馬」なんて烙印を押されてしまうんだ。 しかも、古馬になると2歳、3歳時のレースとはガラッと様相が変わってしまう。2~3歳の時は同じ年齢の馬との競走だったが、古馬は基本的に5歳以上のレースが中心となり、4歳だけとか5歳だけといった限定戦はない。そのため、古馬を対象とした春の天皇賞、安田記念、宝塚記念、また秋の天皇賞、ジャパンカップ、有馬記念などのGIレースには4歳から9歳ぐらいまでの古馬の一線級が続々と参加してくることになる(春の天皇賞、安田記念以外は4歳馬にも開放されている)。 もっとも、馬の競走能力がピークに達するのは4歳の秋だと言われていて、古馬のGI戦線はこの4歳を中心に展開していくのは否めない事実。3歳ではクラシック・ロードを歩めなかった奥手な馬たちが、古馬になってから起死回生のGIホースに輝くこともよくあるんだよね。

小回り(こまわり)
福島競馬場、小倉競馬場、中京競馬場、あるいは中山競馬場の内回りといった直線が短くカーブのきついコーナーを持つコースのこと。かつては阪神競馬場も小回りコースの代名詞のように言われていたが、平成3(1991)年の改装後は第ニコーナーの急カーブもいくぶん緩和された。それでもけっこうきついけど。 このような小回リコースはコーナーワークが命。直線も300メートルほどだから、小器用な逃げ馬が内ラチ沿いに進んで、あれよあれよという間に逃げきってしまうことが多いんだ。

コロガシ
あるレースを的中させたら、払戻金をそっくり次のレースにつぎ込み、さらに当たれば次のレースにつぎ込むという賭け方。雪玉を転がすとだんだん大きくなっていく感じを連想してもらえば、しっくりくるだろう。

さ行
サイン馬(さいんば)
あらゆるレースは影の演出者によってあらかじめ仕組まれており、その答えのヒントがレース名、馬名、騎手名、厩舎名、馬主名、着順、父母馬名、前のレースの出目などといった要素にサインとして仕込まれているという説が一部のファンの間でまことしやかに囁かれている。そうしたサインを出している馬のことをサイン馬という。サイン馬作戦とは、暗号を解読し、隠された勝馬サインを見つけだそうという、まあ、ほとんどヤケクソ気味の馬券必勝法のひとつなのだ。

ササ針(ささばり)
馬の筋肉の凝りや鬱血した患部を治すために、針を刺して血を出す治療法。

ささる
レースや調教中に、まっすぐ走らずに、コースの内側にななめに走ること。→←よれる

差し(さし)
①最後の直線で、前の馬を追い抜くこと。
②脚質の一種。

挫石(ざせき)
蹄の底のほうに起こる内出血のことで、蹄の質が悪いと挫石になりやすい。挫石が発生した場合、無理をすると、裂蹄や骨折などを引き起こすことがあるので、当然レースには出れなくなる。挫石で挫折、なんて馬もいるわけだ。 もっとも、ほかのケガや病気と違って、腕の確かな装蹄師に装蹄を依頼すれば、ある程度は避けて通ることが可能。だけど、体質的に挫石にかかりやすい馬っていうのもいるから、こればかりはしょうがないな。

皐月賞(さつきしょう)
3冠レースの第1関門が、4月の上旬に中山競馬場で開催される皐月賞。このレースは英国の2000ギニー競走の日本版だ。しかし、2000ギニーが1600メートルなのに対して、こちらは400メートル延長の芝2000メートルで競われる。歴代の皐月賞馬の特徴といえば、早熟なスピード馬と決まっている。なにしろ、このクラシック・レースに出走するには2歳時から賞金を稼ぐか、弥生賞、スプリングステークスで3着以内、あるいは若葉ステークスで2着以内に入って優先出走権を手にするしか方法がないんだもん。

サラ系(さらけい)
正式には「サラブレッド系種」と言い、サラブレッドとアラブの混血のうち、アラブの血量が25パーセント未満の馬を指す。また、海外から種牡馬を輸入する際、血統書が紛失していた場合なども、「サラ系」に分類されるというけど、こつちはかなりいい加減な話だよな。ちなみに、アラブの血量が25パーセント以上の場合ファングロアラブと言う。サラ系でも、サラブレッドと交配を重ねると、8代目からは純粋な「サラブレッド」 と見なされる。 日本ではこの「サラ系」を軽んじたり、差別する傾向がある。

サラブレッド
16世紀に盛んとなった英国競馬は、17世紀になると「より速い馬」を求めるようになる。そこで優秀な東洋の馬たちを多数輸入して、英国在来の牝馬と交配させるようになった。そのなかで1700年前後、英国に輸入されたダーレーアラビアン、バイアリーターク、ゴドルフィンアラビアンの3頭のアラブ馬との交配種は、子々孫々まで非常に繁栄することとなる。この品種のことを「サラブレッド」というんだな。 ちなみにダーレーアラビアンは1700年、シリア生まれ。エクリプス、ネアルコ、ナスルーラ、ノーザンダンサーなどの種牡馬を輩出し、現在もっともブリブリいわせてる血統だ。 バイアリータークは1680年、トルコ生まれ。一時は絶減寸前だったが、ザ・テトラーク、トウルビヨンという種牡馬で息を吹き返した。かの7冠馬、帝王シンボリルドルフを生んだパーソロンも、この血統。 ゴドルフィンアラビアンは1724年、エジプト生まれ。短距離を得意とする血統が栄え、史上初の3冠馬ウエストオーストラリアンや米国のマンノウォー、日本のクライムカイザーを輩出したヴェンチアなどを輩出している。 このように血統を大切にするがゆえに「競馬はブラッド・スポーツ」と呼ばれる。

3冠馬(さんかんば)
3歳牡馬クラシック(皐月賞、日本ダービー、菊花賞)、すべてのタイトルを手にした馬。

三分三厘(さんぶさんりん)
3コーナー過ぎのちょうど勝負どころの地点を言う。1分とは1マイル(約1600メートル)の8分の1(約200メートル)のことで、3分3厘とはゴールから逆算してほぼ660メートルに当たる。 昔、1800メートル程度のレースが多かったときに、ラスト3分の1の地点という程度の意味で使われていたことが由来と言われている。いずれにしても、3分3厘は騎手にとって仕掛けどころのポイントであり、ここでの騎手間の駆け引きが勝負を決する場合が多い。

三大始祖(さんだいしそ)
サラブレッドの祖先を表していう言葉。どの馬も先祖をさかのぼれば、次の3頭に行き着くといわれる。 ◇ダーレー・アラビアン…現在のサラブレッドの90パーセントがこの系統とされる(エクリプス系ともいわれる)。 ◇バイアリーターク…三冠馬シンボリルドルフはこの系統(ヘロド系ともいわれる)。 ◇ゴドルフィン・アラビアン…マッチェム系ともいわれる。

仕上がり(しあがり)
出走馬の肉体的な準備状態を言う。たとえば無駄なぜい肉がまったくなく、走るのに必要な筋肉がムキムキの状態を「仕上がりがいい」「ギリギリの仕上がり」という。その反対に仕上がりが良くない時は「太目」とか「細目」、あるいは「ガレ気味」などと呼ばれる。「太目」とは脂肪やぜい肉がついた状態。下腹部が弛んで、股下への切れ上がり方が鈍いのが代表的な特徴だ。「細目」とはもちろん「太め」の逆。肉が落ち過ぎて、腹の線に余裕がなく、腰骨が尖って見えたりする。この細目がさらに進んだ状態が「ガレ気味」だ。ゼッケンの下に隠れたあばら骨がかなり浮き上がって見える。

死角(しかく)
競馬の世界にも絶対なんてあり得ない。たとえ鉄板のように固いと言われる本命馬であっても、何かしらウィークポイント=死角があるわけだ。 とくに、人気どおりに馬券を買うのをよじとしない穴党ファンにとっては、グリグリの◎が並んだ大本命馬が出走してくると、あれこれと死角を探そうとする。

仕掛け(しかけ)
レース、調教などで、騎手が馬に気合いを入れて、スパートすること。「―どころが遅い〔=ゴール直前になるまで、スパートをかけないこと〕」

軸(じく)
馬券を予想をする場合に中心に据える馬のこと。軸馬とかアタマとか言うこともある。また、連勝馬券を買う場合には連軸などと使ったりするが、この軸を決めるのが、勝ち馬推理の楽しみのひとつ。 もちろん軸を決めるのはあくまでも個人の趣味。専門紙を見ると、予想欄に◎がびっしり打ってあって「軸不動」なんて書いてあることがあるが、別に気にすることはない。無印良馬もたくさんいるから、自分の推理通りに軸馬を決めればいい。

自己条件(じこじょうけん)
馬の収得賞金に見合ったレース条件のこと。たとえば収得本賞金800万円の馬だと1000万下の条件戦と呼ばれるレースが自己条件。この馬が1600万下やオープンレースなどに出走すると格上挑戦という。、格上で通用しそうにないとなると、また自己条件に出戻ってくることもある。調教師や騎手が「ここは自己条件だから負けられない」という時は、たいてい格上挑戦から舞い戻ってきた場合。まあ、自己条件=身の程と覚えておいてもいいだろう。

下見所(したみしょ)
競馬場に入ると、すぐに足を運ぶのがココ。下見所とは、次のレースに出走する馬が、自分の退しい体つきをファンのみなさんにお披露目する小さな馬場をいう。別名、引き馬場、あるいは、英語好きな僕たち日本人はパドックと呼ぶ。 下見所には1周100~150メートルの円形あるいは楕円形の全天候型トラックがある。ここを馬たちは厩務員に引かれてのんびりとぐるぐる回る。そして、係員の合図で一旦立ち止まり、その後、騎手たちが騎乗して1周ほどして、地下通路を通って本馬場入場となる。この間、約20分、間近で馬の体調や気合乗りなどをじっくりと観察することができるので、とっても馬券の参考になる。

失格(しっかく)
レースの最中に進路妨害などで被害を受けた馬が競走中止した場合や前検量と後検量の差が1キロ以上あった場合、あるいはその他の不正行為があった場合の制裁措置のこと。その馬の着順は取り消され、着外扱いとなってしまう。そうなると当然、失格馬の絡んだ馬券は、すべてパー。「シッカク当たったのに~」なんて悔しがっても後の祭だ。 しかも、その馬に投資していた人の掛け金は返還されない。

絞れる(しぼれる)
ハードな調教をこなして、馬体が引き締まった仕上がり状態のこと。たとえば長期休養明けの久々のレースで前走時より馬体重が10キロも重かったとしよう。この馬が、次のレースまでに猛ゲイコを行って、マイナス10キロになり、休養前のハリのある体になったとする。こういう場合に「おっ、馬体が絞れて、腹のあたりがスッキリしたね」などと使われる。この他にも仕上がりに関して「細目」とか「太目」とかいう言葉が頻繁に登場する。この「細目」とは必要以上に肉が落ちてしまった状態。それが嵩じると「ガレる」 といって、アバラ骨が浮き出たガリガリの馬体になる。 逆に「太目」は脂肪やぜい肉がついた、いわゆる「デブい」という状態だ。こうなると、レースの途中で息が上がってバテバテになってしまうことが多いから要注意。また、無駄な肉をすべてそぎ落として、必要な筋肉だけを残した馬体の極限状態をギリギリの仕上がりというが、これは、いわゆる勝負がかり。ちゃんと馬体をチェックしておかないと、ギリギリ舞いさせられることになる。

遮眼革(しゃがんかく)
馬の中にもレースの最中にキョロキョロキョロキョロと落ちつきがなく、走る気をまったく見せないヤツがいるんだ。そんな馬に対して、持てる力をすべて競走に向けさせるため、前方しか見えないように作られたのが、この遮眼革。英語ではブリンカーという。 遮眼革は、眼の脇にお碗を被せたような革製の装具で、他馬を怖がるような神経質な馬にも効果がある。実際に惨敗続きの競走馬が、遮眼革をつけたとたんに大変身。馬込みでもどこでもしり込みせずに猪突猛進、いやもとい、馬突猛進して連勝街道をばく進した、なんてケースもあるとか。

斜行(しゃこう)
まっすぐ走れず、ななめに走ってしまうこと。レース中、他の馬を妨害すれば、失格や降着になる。

シャドーロール
大きな体に似合わず神経質な競走馬たち。なかでも特に気の小さい馬になると、レース中に自分の脚の動きや影、芝の切れ目にもびっくりして、もう走るどころの騒ぎではない。そうした馬に使われるのが、南蛮渡来のシャドーロールだ。 羊毛で作られた、このモールを鼻の上にはめ込むと、たちまちのうちに視野が狭くなって、もう足元は見えない。つまり恐怖心はゼロとなり、馬はひたすら全力で疾走できるようになるのである。

ジャパンカップ
昭和56(1981)年に創設された日本初の国際招待レース。略してJC。このレースは、鎖国状態と言われた日本競馬界が、世界に通用する馬作りを目指して、自ら招いた黒船だった。

秋華賞(しゅうかしょう)
エリザベス女王杯が4歳以上の牝馬も出走できる「日本のファーストレディ決定戦」となったのを受け、平成8(1996)年から新設されたGIレースの名称。桜花賞、オークスと並ぶ、3歳牝馬の3冠レースのひとつ。 毎年10月中旬、秋のGIシリーズの初戦として、京都競馬場で行われる。距離が2400メートルから2000メートルに短縮されたほかは、エリザベス女王杯時の条件がほぼ継承された。牡馬の菊花賞に外国産馬が出走できないのと違って、クラシック組と外国産馬が同世代の牝馬の頂点を競うレースとしての性格は変わっていない。

15、15(じゅうごじゅうご)
馬を1ハロン15秒の速度で走らせること。1ハロンは200メートルなので、100メートル、7秒半で走るという計算になる。馬の100メートルの平均タイムは約6秒だから、速度は標準のギャロップよりだいぶ遅い。つまり、15、 15とは、ごく軽い調整。ケガの療養や休息などの理由で、しばらくトレーニングを休んでいた馬が練習を再開するときは、慣らしの意味で、このくらいの速度で走らせることが多いのだ。「15、15で追う」というような言い方をする。

重賞(じゅうしょう)
特別レース(レース名に「特別」「ステークス」「賞」などがつく競走)の中でも最も重要度の高いオープンレース。年間3000あまりの中央競馬のレースの中で、重賞はおよそ100レースほどしかない。だから、重賞を制することは馬にとってもハクがつき、非常に価値のある勝ちということになるんだな。この重賞をさらに格付けしているのが、グレード制とよばれるシステム。GI、GⅡ、GⅢと分かれていて、クラシック・レースや天皇賞、有馬記念などがGIとなる。

重量オーバー(じゅうりょうおーばー)
騎手が減量調整に失敗して、馬の負担重量をオーバーすることを言う。 たとえば、負担重量が51キログラムの場合、馬具の重量(約ニキログラム)を差し引くと、騎手の体重は49キログラム以下でなければならない(軽すぎるときは、鉛をつけて重量を調整できる)。この際、1.9キログラムオーバーまでは許容されるけど、それ以上になると騎手を変更しなければならなくなるんだな。もちろん許容された場合でも、負担重量が増えるわけだから馬にとっては不利になるわけだ。 また、レース直後に行われる後検量の重量が前検量のときと1キログラム以上の増減があった場合は、原則として失格という厳しい処分が下される。

準オープン(じゅんおーぷん)
馬は収得賞金によって未勝利、500万下、1000万下、1600万下、オープンとクラス分けがされている。この1600万下のレースの中の特別戦のことを、オープンレースの下歩手前ということで準オープンという。 競馬新聞に目を通しながら、「今日の10レースは準オープンか」などと呟くと、競馬気分が高まることウケアイだ。

昇級戦(しょうきゅうせん)
競走馬は収得賞金によって新馬・未出走・未勝利、500万下、1000万下、1600万下、オープンとクラス分けがされている。このクラスを勝ち上がることを昇級といい、上がったクラスでの最初のレースを昇級(初)戦と呼ぶ。

条件馬(じょうけんば)
条件馬とは、自己条件が1600万下クラス以下の馬のこと。新馬、未出走馬、未勝利馬なども条件馬ということになる。 この反対がオープン馬。オープン馬になるには馬の年齢と時期にもよるが、2歳デビュー時は400万円以上、2歳秋から3歳5月中旬までは501万円以上、3歳初夏までは901万円以上、古馬4歳初夏までが1501万円以上、それ以降は3001万円以上という収得賞金基準をクリアしていなければならない。

招待馬(しょうたいば)
国内のレースに出走してもらうため、海外から招待した外国馬のこと。 海外の騎手と馬が活躍する国際交流競走は、JC(ジャパンカップ)、安田記念、京王杯スプリンターズカップなどがあり、今後も競馬の国際化の流れを受けて増えていく見込みだけど、JRAが遠征費を負担して招待馬を呼ぶレースは、JCのみ。そうまでして、外国馬をわざわざ招待する理由は、海外の強豪馬と日本の馬を戦わせることで、日本の競馬のレベルを向上させる狙いと、有名外国馬のネームバリューでレースを興行的に面白くさせる狙いがあるようだ。 招待馬は、本気でJCを勝ちにきている馬と、ほとんどアゴアシ付きの接待のノリで日本に来ている馬とがいて、その判別が難しい。

勝負カイバ(しょうぶかいば)
レース当日の朝、競馬場の出張馬房で食べるカイバのこと。通常、朝のトレーニング後に与える「朝カイバ」と区別するところが、勝負へのゲンかつぎのようでカイバの中身は普段とあまり変わらず、その馬の好物を中心にしたメニューにするケースが多いが、なか にはマムシやハブ、ロイヤルゼリーなどの強壮剤が入った、文字どおりの勝負カイバが与えられることもあるという。 ちなみに、レースに出走するときに打つ蹄鉄のことを勝負鉄と言い、調教時などにつけている平鉄と比べ3分の1程度の軽さになっている。

勝負服(しょうぶふく)
初めて競馬を見た人が、そのド派手さにビックリするのが出走する騎手の着るシャツ。勝負服に使える色は赤、桃、黄、緑、青、水色、紫、薄紫、茶、えび茶、ねずみ、黒、自の13種類。模様も縦縞、ダイヤモンドなど14種類と決まっているんだよね。 ただ、その限られた色と模様を駆使して、中央競馬会の馬主たちは、それぞれオリジナルなデザインの勝負服を作っている。いいかえれば馬主の数だけ勝負服の種類があることになる。その数2000種以上。だから、「あの勝負服は緑の袖に赤の胴、黒の格子柄だから、オーナーは○○だな」とひと目で分かればかなりの競馬フリークと言えるだろう。 ちなみに素材には決まりがなく、通常使われるのはシルクサテン。ただ、最近では体にぴったりフィットして空気抵抗の少ないエアロフォームという新素材まで使われてるとか。そのうち、宇宙まで着て行ける勝負服が開発されたりするかもなあ。

除外(じょがい)
競走馬が、装鞍所で鞍をつけたあとに、出走を取り上めること。ゲートインの集合合図前なら競走除外、集合合図後なら発走除外と言う。 除外は、パドックや返し馬で変調や故障が見つかったり、どうしてもゲートインしない場合などに取られる措置。もちろん、馬券は払い戻される(枠連で同枠の馬がいる場合はダメ)。「除外馬の出た同枠馬が連にからむ」というジンクスめいた言い方も数年前まではあった。ちなみに、装鞍所への集合の前に出走を取り止めれば、除外ではなく、出走取り消し、また、レースが始まってからなら競走中止となる。

ジリ脚(じりあし)
瞬発力に欠け、レース中、終始平均した速度でしか走れない脚質の馬。ジリ脚の馬は、先行して、文字どおりジリジリと粘るような走りをし、観ている人をジリジリさせる。しかし、逃げ馬を捕らえるような切れる末脚ではないので、結局、2、3着が多くなる。  このタイプの馬は、平坦馬場が多いローカル競馬場や、1マイル(1600メートル)以下の短距離レースは苦手。逆に、長距離レースや、粘り強さが重要なダートコースでは、好成績をおさめることが多いのだ。

シンが弱い(しんがよわい)
性格や精神面を表す。つまり、性格的に幼い馬を「シンが弱い」、逆にしっかりしている馬を「シンが強い」と言うわけだ。 馬は元来、閉所恐怖症を持つ臆病な動物で、馬込みに入ると他馬を恐れて走れなくなったり、ラチ沿いなどの狭いところを通りたがらない。とくに、レース経験の浅い若駒は、1~2戦でたとえ圧倒的な強さを見せていても、他馬に入れ代わり立ち代わり競りかけられたり、馬込みに包まれるなど、もまれる展開に遭遇したとたんに精神的な弱さを露呈し、走る気をなくして惨敗するケースが往々にしてある。 こうした性格は、たいていレース経験を積むにしたがって矯正されるけど、やっぱり人間と同様、いつまでたっても、いざと言う時に勝負弱い馬も必ずいるから、馬券戦術を練る際には気をつけて観察しておきたいな。

シンザン記念(しんざんきねん)
戦後初の3冠馬で、のちに有馬記念、天皇賞も勝って5冠となった名馬シンザンにちなんで創設された3歳馬対象のGⅢレース。正式には「日刊スポーツ賞シンザン 記念」と言う。芝1600メートルで、通常は京都競馬場で開催される。 毎年1月の厳寒期に行われることもあって、東の京成杯と同様、クラシックをめざす有力馬は回避する傾向にある。せっかく5冠馬シンザンを記念したレースなんだから、クラシックに結びつくレースになってもらいたいが、残念ながら勝馬もクラシックとはほとんど無縁。

進上金(しんじょうきん)
馬主が本賞金から、調教師、騎手、厩務員に渡すお金のこと。調教師は10パーセント、騎手は5パーセント(障害レースは7パーセント)、厩務員は5パーセントの分け前となる。 「進上」とは、差し上げることを意味する尊敬語だから、形式的ではあるにしても、競馬の世界では調教師や騎手のほうが馬主よりエラいということになっているわけだな。なんかこういうプロに対する尊敬をしっかり示すことって、いい習慣かもしれないな。

心情馬券(しんじょうばけん)
勝ち負けの確率は度外視して、思い入れのある馬にがんばってほしいとの願いを込めて買う馬券のこと。応援馬券とも言う。 ようするに強い馬を好きになればいいのだが、世の中そんなに単純にいかないところがおもしろい。ほぼ100パーセント負けるとわかっていても、馬券を買わずにはいられないのがファン心理。

新馬(しんま)
生まれて初めてレースに参加する馬のこと。これらルーキー馬たちを集めたレースを新馬戦という。新馬戦は、2歳6月中旬の札幌開催から始まり、明け3歳の3月まで行われ、それ以後、未出走戦と名前が変わる。 新馬戦に出走した馬は、デビュー戦の同一開催期間中であれば、何度でも新馬戦に出走可能。たとえば東京開催の週に出走して、中2周でまた新馬戦に出走できるというわけ。ただし、1度でも勝つと次のクラスヘと進むことになり、もう新馬戦に出ることはできない。 かたや新馬戦を勝ち上がることができなかった馬たちはどうなるのか。それは3歳11月まで続く未勝利戦へと回される。だが、ここで勝てない馬は最下級条件の道を歩み続け、4歳になって1勝もできないと、中央場所で走れなくなる。 ちなみに新馬戦を勝ち上がることはエリート馬の証明。だから、新馬戦を見守る馬主や調教師はみんなハラハラドキドキ。

末脚(すえあし)
ゴールまでの残り600メートル(上がり3ハロン)や最後の直線で使う馬の脚色をいう。たんに末とか終いという言い方をされることもある。たとえば、芝良2000メートルでゴール前グイグイ伸びて、上がり3ハロン35秒台だったとすると、「末(脚)が切れた」「終いの脚がいい」などと使われるわけだ。 その反対に直線でバテたり、ジリ脚だったりして、直線でまったく伸び脚がないと「まだまだ末が甘いな」とか言われて、白い目で見られてしまう。

素軽い(すがるい)
素軽いとは、馬のフットワークが軽快で爽壮としていること。パドックや返し馬を見て、「あの馬、かなり素軽いねえ」というような使い方をする。

ステイヤー
人間で言えばマラソンランナーに当たるのがステイヤー。つまり、2400メートルを超える長距離を得意とするスタミナ型の馬を指す。現在、平地で最も長い距離3600メートルのステイヤーズステークス(GⅢ)が、ステイヤーの健脚のために用意されている。 このタイプは、だいたいにおいてのんびり屋さんが多く、あまり細かいことは気にしない。

ステップ
直訳すると踏み段の意。目指すレースヘ向けて、その足がかりとして出走を予定するレース、あるいはそのルートのことを指す。 たとえば、目標のレースが菊花賞であれば、関東馬はセントライト記念(GⅡ)から、関西馬は神戸新聞杯(GⅡ)から菊花賞トライアルの京都新聞杯(GⅡ)へと進むのが通常のステップ。

スパービン
飛節の内側に骨瘤(コブ)ができる病気を言う。飛節とは、馬の後肢の中間で、後ろに関節が突出している部分。人間で言えばかかとに当たる。まあ、かかとにコブが出来たら、歩くこともままならなくなるのは容易に想像がつこうというもの。 若い馬に多く見られるが、運動に大きな障害をきたすため、順調に出世(クラスを上げる)していくうえで、スパーピンはそれこそ「目のうえのコブ」になりかねない。 治療には焼烙法などがあり、完治するのはそれほどむずかしくないと言われる。

ズブズブの馬場(ずぶずぶのばば)
馬場状態は含水量によって決められ、芝コースの場合は21パーセント以下が良、32~24パーセントがやや重、25~27パーセントが重、それ以上が不良、ダートコースの場合はそれぞれ11パーンセント以下、12~13パーセント、14~15パーセントである。ズブズブの馬場というのは、文字どおり、ズブズブと足が潜ってしまうほどの「不良馬場」を指す。これとは逆に、乾ききった状態の馬場をバンパンとか、パンパンの良な どと言う。競馬の場合はほかのスポーツと違って、台風や積雪で中止になることはあっても、雨で中止になることはまずない。

スプリンター
主に1200~1400メートルの短距離レースで活躍する馬のこと。暮れの中山で開催される電撃の6ハロン(1200メートル)、スプリンターズステークスは、そんな馬たちのために用意された、とっておきのGIレースと言っていいだろう。 さて、このスプリンターたちの気性といえば、一般的にとても神経質だと言われる。たしかにいつもカリカリしていて、イレ込み気味の馬が多く、それだけにゲートが開いた瞬間から、我慢できずにガンガン飛ばしていく。実際、スプリンターズステークスの勝ち馬を振り返ってみると、逃げきりや先行抜け出しが数多くいることがよく分かる。

スプリンターズステークス
12月中旬に中山競馬場で行なわれる、芝1200メートルのGIレース。平成6(1994)年から、安田記念と同様の国際レースとなり、スプリンターズステークスに勝った馬は、文字どおりの最強スプリンターとして認められる。 「電撃の6ハロン」というのが、このレースを形容するときの決まり文句。

スローペース
レースの流れが遅いこと。「逃げ馬不在の―  〔出走メンバーに逃げ馬がいなくて、レースの流れが遅くなること〕」

ゼッケン
レースや調教の時、鞍の下に着けられる番号を書いた布のことをいう。ただし、レースのゼッケンには馬番の番号の他にも馬の名前、またビッグレースではレース名まで書かれている。だから競馬初心者にはなかなか重宝。レース中、自分の買った馬がどこを走っているかが、一目瞭然だからね。 これが調教用のゼッケンになると名前などは書かれていない。ゼッケン番号がトレセン内における、その馬だけが持つ背番号の意味合いも持つからだ。また、遠くからでも判別しやすいようにゼッケンの色も年齢によって変えてあったりする。

ゼニ形の斑点(ぜにがたのはんてん)
人間も健康で調子が良いときは肌がすべすべして艶がいい。馬も同様で、毛づやがいいときは調子がいい証拠であるが、なかでもこの斑点が馬体の表面に浮き上がっていれば絶好調とみていいだろう。とくに芦毛の馬を指して(連銭芦毛とよばれる)言うことが多いけど、毛色によって現れやすいという違いがあるだけで、芦毛の馬以外にも現れる。パドックで注意していてもめったに見つけられないが、もしも運よく見つけることができたら、馬券戦略の参考にするといい。ただし、いくら調子がよくても能力が劣っていれば勝て ないことは、くれぐれも忘れないように。

攻め馬(せめうま)
これは、出走直前の競走馬が、最終的な仕上げをするハードな調教のことをいう。最近は「(本)追い切り」という言葉の方がよく使われるが、以前は馬を攻め上げて仕上げてい たことから、こう呼ばれるようになった。専門紙によっては「調教」「ケイコ」なども同じような意味で使われている。 ただ、それでは少々ややこしい。そこで、基本的に調教やケイコは毎日のトレーニング、攻め馬や追い切りは水曜や木曜の「追い日」に行われる最終調教だと覚えておくと分かりやすい。

せり市場(せりいちば)
家畜取引法に基づいて、生産者側が開設者となり、1歳馬を中心にせり取引される市場のことを指す。 通常のせりと同様、売主の最低希望価格(=お台)からせりが始まり、最高値で落札される。ここで取引された馬は、出馬表などにマルイチと表示されるからすぐにわかる。せり市場で声のかからなかった馬は、生産者引き取り(=主取り)となる。 ちなみに、セリ市場で取引される馬は、最近増えてきてはいるけど、全体からみると1割にも満たない状況で、中心になっているのは、売り手と買い手が直接話し合って値段を決める庭先取引だ。ちょっと閉鎖的なネーミングだけど、農家の庭先で農産物を取引する「庭先渡し」からつけられているんだな。 このほか、馬主が牧場に牝馬を預け、その子を所有する子分けという制度もある。

全兄弟(ぜんきょうだい)
父親・母親ともに同じ馬のこと。全兄、全弟というふうに使う。 競馬の世界では、人気種牡馬ともなれば1年に100頭近くも種付けするため、父親が同じだけでは兄弟(姉妹)とは呼ばず、母親が同じ場合に初めて兄弟(姉妹)となる。 母親だけ同じ場合は(半兄弟共姉妹)、父親は異なるけど、父の父が同じ場合は4分の3兄弟(姉妹)と言う。全兄弟(姉妹)は、同じ遺伝子が伝わっているのだから能力的にも遜色ないはず、と思うかもしれないが、そこは人間の兄弟(姉妹)を見てもわかるように、単純にはいかない。

先行(せんこう)
先行とは読んで字の如し。お先に行きますよということ。とはいえ、スタコラサッサとひたすら逃げを打つわけではない。逃げ馬の2、3番手にしっかりつけて直線で抜け出し、そのままゴール板を通過しようという戦術なんだ。こうした脚質を持った馬が「先行馬」と呼ばれる。 近代競馬では、先行してから差す脚を持った馬が、1番有利だと言われ、かの7冠馬シンボリルドルフも「先行差し」を最も得意としていた

前日追い(ぜんじつおい)
レースを控えた馬の最終調整「追い切り」の方法は厩舎によってホントにまちまち。しかも、馬の体調や気性によっても大きく変わってくるんだ。だから、通常は水曜日か木曜日の「追い日」に追い切って終わりなんだけど、さらにレース前の金曜か土曜の朝、軽く足ならし程度に追い切ることがある。これを「前日追い」、あるいは朝追いと呼ぶ。 また、ごくごく稀に、レース当日の朝、流す程度に追い切る当日追いを行う場合もある。

疝痛(せんつう)
人間の世界でも、下腹部を中心として内臓が痛む病気を「疝痛」と呼ぶけど、馬の場合は腹痛を伴う病気の総称になる。 具体的には、便秘癌、風気癌(ガス腹)、痙攣痛(急性腸カタル)、寄生虫癌、食帯癌、過食癌(急性胃拡張)、さく癖(グイッポ)、腸捻転などさまざま。便秘や寄生虫が原因の場合はそれほど心配ないが、腸捻転などは致死率の高いコワーイ病気である。 馬は草食動物なので消化器官が長いうえ、競走馬はストレスも多く、この病に悩まされるケースが少なくない。

せん馬(せんば)
去勢された馬。気性が激しく、レースに集中できない馬に去勢を行う。

前夜検討(ぜんやけんとう)
発表された出馬表をもとに綿密な予想を立てること。 競馬ファンにとって最も夢が膨らむ楽しいひとときだ。

専門紙(せんもんし)
競馬新聞のこと。競馬情報だけをとりあつかっており、スポーツ新聞、夕刊紙などと差別化するときに(競馬)専門紙という名称が用いられる。現在発行されている主な(競馬)専門紙は次のとおり。関東・関西…ホースニュース馬、競馬エイト、競馬ブック 関東…1馬、勝馬、ケイシュウNEWS、競馬研究、競友、ダービーニュース、日刊競馬 関西…競馬キンキ、競馬サイエンス、競馬ダービー競馬ニホン、競馬ニュース、競馬ファン

装鞍所(そうあんしょ)
馬に鞍をつける場所。馬体重の測定や馬体検査なども行われる。

早熟馬(そうじゅくば)
2歳デビュー時から3歳の春あたりまでにパッと勝ち、、その後シリすぼみになる競走馬のことをいう。こんな馬は古馬になると、いつしかオープンクラスから姿を消し、条件戦どころか障害レース、あるいは地方競馬に転向したりすることもある。また、なかには早々に競走馬生活を引退して乗馬クラブで余生を送ったりする馬もいる。

総流し(そうながし)
これは軸となる馬や枠を決めて、他の馬や枠との全ての組み合わせを買うという方法だ。たとえばフルゲート18頭立ての場合、1番の馬をアタマに下―2から18までの17点を買うことになる。だから、狙った馬が1、2着にくれば必ず当てることができる。ただ、なるべく投資額を少なくしたいと考えるのは人情だ。オッズや馬の実績、調子を考えて3頭だけに流したり(落下傘買い)、総流しから1、2点削ったりすることもある。

相馬眼(そうばがん)
馬の能力や調子、距離適性、将来性などを見抜く眼のこと。馬を見る基本は、毛づや、歩様、一点を見据えた澄んだ目、気合い、ボロの状態、肩の出方、耳や尻尾の動き、発汗の状態、などさまざまだが、相馬眼の達人ともなれば、新馬戦前の若駒でもちょっと見ただけで「この馬はダービー馬になれる器」などと断言したりするから大したもんだ。

ソエ
2~3歳の成長途上の馬がかかりやすい、前脚のヒザのあたりにできる骨膜炎。

素質馬(そしつば)
血統はもちろん、勝負根性、脚力、馬体のどれをとっても1級品で将来が楽しみな馬のことを言うんだ。こうした素質馬は、たとえ現時点では走れてなくても、先物買いの好きなファンたちによって人気になることが多い。ただし、もちろん素質馬とはいえ必ずしも大 成するとは限らない。鳴かず飛ばず、走らずで引退する馬もいるから要注意。

染分け帽(そめわけぼう)
日本の競馬は8枠制で、枠ごとに騎手がかぶる帽子の色が決まっているが、同一枠に同一馬主の馬が入った場合、勝負服も帽子も同じになってしまい、レース中、馬の区別がつきにくくなる。このため、同枠外側の馬の騎手の帽子を白色とその枠の色とで4ツ染め分けにする。これを「染分け帽」と呼ぶ。紙風船のようなデザインの帽子と言えばわかりやすいかな。

ソラを使う(そらをつかう)
レースや調教中に、走る気をなくしたり、集中力を欠いたりすること。

た行
ダート馬(だーとうま)
砂地でのコースを得意とする競走馬。力馬とも呼ばれ、スピードよりもパワー勝負に命をかけるじり脚タイプが多い。ところが、悲しいことに中央競馬は芝コースを中心にレース体系が組まれている。ダート馬がGIクラスのビッグレースで活躍する可能性は非常に少ないんだ。

ターフビジョン
競馬場内に設置された大型映像ディスプレイのこと。 観客席の前にあって、レース結果やらオッズやらが映しだされている、あのでっかいテレビのことだな。

ダービー
ダービー創設の由来になったのは、1780年に英国の第12代ダービー伯爵が創設した芝2400メートルのダービーステークス。日本ダービー(東京優駿競走)は、サラブレッド4歳馬が生涯にただ1度、競走馬最高の栄冠を賭けて競い合う、事実上、日本競馬界で最高の権威を持つレースだ。4歳3冠戦の2冠目を決める戦いでもある。 開催時期は5月。舞台となるのは東京競馬場、芝2400メートルだ。1着賞金額は、もちろんGI最高ランク。出走馬数はフルゲートの18頭。

滞在競馬(たいざいけいば)
ローカル開催に出る場合や、関西馬が関東の競馬場、関東馬が関西の競馬場のレースに出るとき、栗東や美浦のトレーニングセンターに入らずに競馬場の出張馬房で調教してレースに備えること。

タイムオーバー
レースで1着馬より一定時間以上遅れた場合、1ケ月間出場停止になり、調教のやり 直しを言い渡されること。 平地レースでは通常、芝コース4秒以上、ダートコース5秒以上がタイムオーバーの基準で、芝だと24~30馬身ぐらいの差をつけられていることになる。つまり、こんなに離されるんじゃ、お客様の大切なお金を背負って走る資格なし、もっと修行しなさいというわけ。若い馬ならいいけど、歳のいった馬なら、タイムオーバーをくらうと、いきなり競走馬人生のゲームオーバーになっちゃう。

高松宮記念(たかまつのみやきねん)
通称、宮杯。5月の下旬に中京競馬場で行なわれる1200メートルのスプリント戦。 かつては、7月に2000メートルで争われたGⅡレースだったが、 1996年からはGIに格上げされた。競馬のスピード化の流れを受けて、スプリンターの活躍する舞台がまたひとつ増えた。 外国馬も出走できる混合戦(マルコン)のGIレースだけに、大迫力のスピードレースが期待できるだろう。小回りの中京競馬場が舞台だけに、逃げ、先行馬を中心に、比較的人気サイドで決まることが多いレースだったが、1200メートルになって、よりそういう傾向は強まると思われる。

宝塚記念(たからづかきねん)
暮れの有馬記念と並び称されるドリームレース。7月上旬、阪神競馬場で2200メートルで行われる。出走できる馬は、ファン投票の上位馬、もしくは推薦委員会の推薦馬。1着本賞金額は、GIレース最高ランク。関西で、もっともエキサイトするオールスター戦だ。しかし、春シーズン終了間際という時期のため、以前は直前に開催される日本ダービーに出走した3歳馬が回避するケースが多かった。1996年からは開催日を繰り下げたため、ダービーに出場した3歳馬も比較的無理なく出場できるようになった。

ダク
パドックから本馬場へ入場してから、ウォークとキャンターのちょうど中間くらいの速度で、トットットッという感じで駆けている馬、よく見かけるよね。そんな、前足を高く上げながら小走りする歩様を、日本語でダク、英語ではトロットと呼ぶ。

たたきあい
レースまたは調教で、2頭以上の馬で競り合うこと。

手綱(たづな)
騎手が馬を御するための綱。 走れ、止まれ、曲がれといった騎手の意志は手綱を通し、口にくわえたハミから馬に伝達される。馬をクルマにたとえれば、手綱は、ファンドルとブレーキ、それにアクセルの役割も兼ね備えた、猛烈に大切なパーツと言える。騎手は、残りのスタミナや脚質を配慮した挙動命令を、手綱を締め(=手綱を絞る)たり、緩めたりすることで、馬に伝えるのだ。

楯(たて)
春と秋の天皇賞に勝った馬には、中央競馬で最高ランクの賞金のほかに、立派な楯が授与される。そのことから、天皇賞のことを、競馬サークルの関係者は「楯」と呼んでいる。

タテめ
連勝馬券(馬連・枠連)を買う場合。①―②、①―③ の組み合わせに対して、②―③の組み合わせをタテめという。「――で外す〔購入した馬券のタテロで1、2着が決まって、外れること〕」

タメ逃げ(ためにげ)
ライバルたちにタメを張りながら逃げる馬のことではなく、後続馬を数馬身以上大きく引き離して、貯金した状態で逃げ込みを図ることを指す。

種付け(たねつけ)
種牡馬と肌馬(繁殖牝馬)を交尾させること。この種付けのシーズンは毎年2月から6月。この3ヶ月間に肌馬の持ち主が交配する種牡馬を決め、他人の種牡馬の場合には受胎の成否に係わらず、安くて10万円、人気種牡馬だと1000万円以上の種付け料を払って交配を行う(最近は受胎後に半額、あるいは7割払う方法もある)。 ただ、種付けペアは人間さまが勝手に決めたもの。

足りない(たりない)
競馬の場合、ひと言で「足りない」と言っても、いろいろな意味がある。最も一般的に使われるのが、レースの格や相手メンバーから見て「(能力的に)ちょっと足りない」というケース。とくに、格上挑戦やダート馬が芝で走るときなんかに多いね。パンパンの馬場でスピード決着が予想されるときに、「(持ち時計が)足りない」などと言うこともある。 また、長距離得意のステイヤーが2000メートル戦などに出走してきた場合や、直線で猛然と追い込んできたけどあと1歩で届かなかった場合には、「(距離が)足りない」などと言う。

単走(たんそう)
1頭だけで調教すること。普通、調教する時には馬に競走意識を持たせるため、2~4頭の馬を同時に走らせる。だけど、なかにはやたら負けん気の強い馬がいて、稽古でヘトヘトになってしまうくらい、目一杯走ったりする。そういう馬の場合には単走で追い切るのだ。レースの間隔が詰まっていて、コンディション的に、もう目一杯の稽古が必要ではないと判断した時にも、単走で追い切り調整したりする。まあ、だいたい単走で追う場合は、本追い切りの調整の時なんかが多いかな。

父内国産馬(ちちないこくさんば)
かつてJRAに登録があり、日本のレースに出走した経験のある馬を父に持つ馬のこと。日本で生まれ育らた馬だけじゃなく、外国産馬でも、日本のレースに出走していれば、同様の扱いとなる。ただし、招待馬はこの範疇に入らない。 日本の競馬界では、国内産の種牡馬よりも、輸入種牡馬の産駒の方が圧倒的に強いのが現状だ。しかし、ガイジンさんの種だけに頼っていたのでは、日本の生産界はダメになってしまう。そこで、下級条件のレースでは、父内国産馬のみに出走権がある父内国産馬限定戦を設けて、内国産馬に出世の機会を与えている。

地方馬(ちほうば)
地方競馬から中央競馬へ移籍してきた馬のことを、地方馬、もしくは地方出身馬という。出走表などに(マルチ)と表示される。昔は、1度地方競馬へ行った馬は、再び中央競馬のほうには戻ってこれなかったんだけど、今では条件付きながら、それも認められている。地方出身馬、というと聞こえは悪いかもしれないけど、歴史に残るような地方出身馬も数多くいるんだ。

着外(ちゃくがい)
ようするに5着以内に入れなかったということ。なんらかの理由によって失格になった場合も着外扱いとなる。馬券にはからまないわ、賞金は出ないわで、正に問題外の馬ってところだな、着外馬は。JRAのほうもそのへんにはきびしいようで、場内アナウンスや場内テレビ、順位掲示板によって知らされるのは、1着から5着までの、入着馬だけ。

着差(ちゃくさ)
1着にゴールした馬の鼻端から、2位以下の馬の鼻端までをいう。 ハナ、頭、クビ、4分の1、2分の1~10馬身まであり、それ以上は大差となる。

着を拾う(ちゃくをひろう)
5着以内に入ることを入着または着と呼び、4着、5着にスベリ込むことを「着を拾う」と言う。6着以下は着外で、本賞金が支払われなくなるため、たとえ勝ち負けは無理としても、厩舎サイドでは出走する以上はこの着をめざすわけだ。5着以内の馬はレース後、掲示板に馬番号が表示されることから、「掲示板ぐらいは期待できる」などと言う厩舎コメントが載ることもある。本賞金とは別に、6~8着の馬にも出走奨励金として、1着賞金のそれぞれ8、7、6パーセントの金額が支払われるけど、やっぱり騎手や厩舎関係者にとっては5着以内に入らないと生計が苦しくなるから必死になるんだよな。

抽選馬(ちゅうせんば)
JRAがせり市で購入し、牧場や競馬場で育ててから、希望する馬主に売却された馬。って説明すると、なんだか選ばれた馬のようだけど、悪く言っちまうと、庭先取引で売れ残ってJRAがせり市で引き取って育ててやり、安く馬主たちに払い下げた馬だな。価格がべらぼうに安いので欲しがる馬主も多い。

ちょうきょうらん【調教欄】
競馬新聞の中に掲載されるデータ。出走馬の調教のタイム、コース、方法などを記したもの。コースは「芝」「ダート」「ウッドチップ」「坂路」の4つ。調教方法には「単走(馬1頭で走らせること)」「併せ馬」などの区別の他、「馬なり」「強め」「一杯」など、馬の気合いのつけ方も記されている。

追突(ついとつ)
馬が走る際、前蹄と後蹄がぶつかることを指す。 後肢の踏み込みが大き過ぎたり、前肢の蹴りが浅いとき、前蹄を後蹄で踏みかけたり、蹄尖部が突き当たったりする。そうなると、皮膚や蹄を傷つけてしまうことが多いのだ。追突は能力のある馬によくみられ、あの名馬シンザンも追突に悩まされた。追突防止には特殊な蹄鉄を装着するが、「シンザン鉄」は当時有名だった。 なお、追突に似た言葉に交突があるが、これは蹄が対側の肢の下部や蹄冠(蹄の上部)にぶつかることを言う。

付け馬(つけうま)
重賞レースでは4頭、一般のレースでは5頭以上の馬が集まらないと、そのレースは不成立となり、開催することができない。まぁ、そんな事態は滅多に起こらないんだけど、それでも希に、ローカル競馬なんかでは、出走頭数がそろわないこともある。そういったレースを成立させるために無理矢理出走させられる馬のことを、付け馬と呼ぶ。 また、長距離輸送を苦手とする馬を送り出す時に、馬に安心感を与えるため、輸送車に同乗させられる馬も付け馬と呼ばれる。 付け馬は、いわばオマケの馬で、本来は勝つはずのない馬なのだが、これが意外にレースで大穴を開けるのだ。ホント、競馬というものはわからない。

つなぎ
競馬用語では、馬の球節と蹄の間の部分を指す。つなぎは、馬が走って着地するときに激しくしなる。この部分が真っ直ぐに立った馬は、球節が直接体重を受けてしまうため、負担が大きくて速く走れない。 逆に、正常(45度)に傾いていれば、つなぎの部分がクッションの役目を呆たし、体重の負担を吸収して、蹴る力に生かせる。当然、走る馬はこのタイプと思って間違いなく、「つなぎが柔らかい」などと表現する。とは言うものの、素人がパドックなどで見分けることはむずかしい

ツメの不安(つめのふあん)
蹄が裂けてしまう病気のことを「裂蹄」と言うんだけど、1度裂蹄してしまうと、それがクセになって、とても再発しやすいんだ。そんな、蹄に爆弾を抱えている馬のことを、「ツメに不安のある馬」なんて言ったりする。また、削蹄に失敗した馬や、装蹄がうまくいかなかった馬も、ツメが不安気味だと言える。

ツル首(つるくび)
馬が下顎を引き、首をツルのように曲げた姿を指す。パドックや本馬場でよく見られる。 パドック解説などでは気合十分の証とされることも多く、見るからに走りそうに感じられるため、馬券に飛びつく人も少なくない。馬は自分からハミをくわえ込み、走る気になるとツル首の状態になるから、あながち間違った見方とは言えない。 ただし、気性が激しくてどんな調子のときでもツル首という、ただのクセという馬もいるから注意したい。

ティーエム【TM】
「トラックマン」の略称。トンセンで厩舎などを取材する競馬新聞などの記者。新聞上で予想を行うこともある。

蹄鉄(ていてつ)
いわば馬の靴。馬の蹄に取り付けられている、あのU字磁石のようなアレのことだ。蹄鉄は競走馬の生命線とも言える大切なもので、蹄を保護し、レースの際には滑り止めとしての役割も果たす。たいてい2、3週間で傷みが目立ってくるので、装蹄師に付け替えてもらわなければならない。 蹄鉄の素材には、軽いが耐久性に欠けるニューム鉄と、耐久性に優れるが重い平鉄の2種類がよく使われ、一般的にニューム鉄はレース用、平鉄は調教用とされている。

出遅れ(でおくれ)
読んで字の如く、スタートミスをして大きく遅れてしまうこと。出遅れてしまうケースで多いのは、馬がゲー卜内で暴れてしまい、スタートのタイミングをはずしてしまう場合。逃げ馬や先行馬が出遅れをやらかしたひにゃ、ハツキリいって目もあてられない。 ほかにも、イレ込み過ぎの馬が初っぱなから大きな歩幅で走ろうと、思い切って後ろ足を蹴り過ぎてしまい、アオって出遅れるなんてことも多々あるな。イレ込み癖のある馬はそれだけイライラしやすく、出遅れてしまう可能性も高い。

テキ
調教師の厩舎内での呼称。 「騎手」(キテ)のことをひっくり返して呼んだのが語源といわれている。

デキ
一般に使われているのと同じ意味で、馬の状態を表す言葉。「きょうのデキはデビュー以来最高」と言えば究極の仕上がり状態を意味する。 ただし、競馬は相手があって初めて成り立つものだから、いくらその馬のデキがよくても、相手が強かったり、距離や馬場状態などの条件が適してなければ、デキの良さだけで通用することは少ないと考えたほうがいい。

手応え(てごたえ)
手綱から伝わってくる馬の感触のこと。「4コーナーまでは手応え十分だったのに、直線ではまったく伸びなかった」などというふうに使われる。また、「手応えのあるレースだった」と言えば、次のレースにつながるような収穫が得られたことを意味する。

出っパ(でっぱ)
レースのスタートを指す。スタートが下手なことを「出っパが悪い」と言う。 馬は本来、狭い場所が嫌いなので、ほとんど例外なく勢いよくゲートを飛び出すが、なかにはゲートの中で暴れてタイミングが合わない馬や、最初の後ろ脚の蹴りが強すぎてアオる馬もいる。1度出遅れグセがつくと、なかなか直らないので、そういう馬は馬券を買う際には頭に入れておきたい。

鉄砲(てっぽう)
長い間、休養をとっていた馬の復帰初戦のこと。「―駆けがきく〔=休養明け復帰初戦でいきなり好走すること〕」。

手前を替える(てまえをかえる)
人間に右利き、左利きがあるように、馬も自分の利き脚を手前にして走りたがる。ところが、コーナーでは内側の脚を手前にしないと走りづらいし、ずっと同じ手前で走っていては疲れてしまう。このため、直線半ばを過ぎると脚を替えて頑張ることになる。これを「手前を替える」と言う。この動きがスムーズにできないと、コーナーで外に大きくふくれたりする。左(右)回りしか好走しないような馬は、手前を替えるのが下手なケースが 多い。1600メートル戦なら、一般的に手前の切替えは4~5回行われるのが普通。「強い馬ほど手前を替えない」とされるのは、同じ手前で走れる脚力があるからだ。

出目(でめ)
サイコロ博打からきた言葉。馬の能力や実績から予想するんじゃなく、「このレースでは『3』が来る確率が高い」というふうに数字のみに着目して予想すること。 レース当日などの「死に目」(出ていない枠番)や「強い目」(何度も出ている枠番)に着目する方法が最もオーソドックスだが、たとえば「ダービーは5年ごとに『足して7になる連勝番号が出る』」といった奥の深いものもあるんだな。

テレビ馬(てれびうま)
レースのスタート後に、必ず先頭に立って逃げる馬を指す。 昔のダービーなどは、フルゲート28頭というように、今では考えられないような多頭数で争われていたため、当然、初めから勝負にならない馬も参加した。その種の馬の馬主にとってみれば、自分の持ち馬をダービーに出走させるだけでも栄誉なことなんだけど、せっかくのチャンスだから、せめて馬がテレビに映り、名前だけでも呼んでもらいたいと思い、逃げて目立てば必ずそれが実現する、とだんだんと欲が膨らんでくるわけだ。これが「テレビ馬」の語源と言われる。

テラ銭(てらせん)
競馬以外でも使われるが、博打でその場代として、胴元(主催者)に支払うお金のこと。競馬の場合、入場料という意味で使われることもある。 漢字で書けば「寺銭」で、音は寺院は一種の治外法権山がつく姓が多いことから、当てずっぽうに「ヤマちゃん」などと声をかけて近づいてくる手口が多かったため、ヤマちゃんとも呼ばれる。 JRAの場合は、払戻金から25パーセント分を差し引いているが、この割合を控除率と呼ぶ。このうち、10パーセントが国庫納付金に、15パーセントがJRAの収入となる。えっ、1万円を持って競馬場に行っても、7500円も手元に残らないって。単純計算で説明してみても、最初のレースで1万円が7500円になり、その7500円を次のレースに注ぎ込んで、またその75パーセントに当たる5625円を次のレースに、など とやっていると、やっぱり限りなくゼロに近づいちゃうんだよな。 欧米先進諸国の控除率が16~19パーセントだから、日本はかなり高いテラ銭だ。まあ、博打はやるより、やらせるほうが儲かると言うけど、本当だよなあ。

テン
競馬用語ではスタート後の数ハロンを差し、「テンの3ハロン」と言えば最初の600メートルになる。この3ハロンのタイムがレース展開のカギを握ることが多く、超ハイペースで先行馬が総崩れになったときなどは、「テンが速すぎましたね」といったように使われる。短距離レースなどでは、スピード豊かな逃げタイプの馬が多数出走してくるため、テンの争いが熾烈をきわめる。こうしたスタート直後の先行争いで後方に遅れてしまうことをテンに置かれると言う。ちなみに、テン乗りとは、騎手がレースでその馬に初めて乗ることを指す。

テンのり
その馬に騎手がはじめて騎乗すること。

展開(てんかい)
レースの流れやペース、各馬の位置取りなどを総合的に言う語句。いわゆるレース展開というやつだ。競馬の予想っていうのは、結局、様々な馬に関するデータを参考にして、レース展開を頭の中でシミュレーションすることなんだな。自分が予想したとおりの展開 でレースが進めば、もちろん勝てるわけだし、その逆も然り。 だけど、レースの展開が必ずしも思いどおりには進まないからこそ、それぞれのレースにたくさんのドラマが生まれるんだ。

天狗山(てんぐやま)
その昔、調教師の先生たちが、高いところから、自分の管理する馬を鼻高々に自慢し合いながら調教を見たことから、調教監視所のことをこう呼ぶようになった。 現在は、近代化された調教スタンドで監視しているが、やっぱり「天狗山」と呼ばれている。一般ファンは天狗山でのやり取りを目にすることはできないが、そこは「勝たなければゼニにならない」厳しい世界だけに、ベンチ裏で当たり散らすどこかのプロ野球監督に負けず劣らず、生々しい姿が見え隠れする。まさに、調教師の意地と誇りの強さをホーフツとさせる場所なんだなあ。これに比べて、調教助手や調教を担当する騎手が控 える場所は小天狗と呼ぶから、まだまだ控えめと言えそうだ。

天神乗り(てんじんのり)
日本独特の乗馬法で、アブミを長くし、馬に垂直に近い感じで乗るスタイル。しっかりまたがるので、馬を強力にコントロールすることができる。 戦前や戦後しばらくは、この乗り方が本流で、現在主流のアブミを短くするモンキー乗りは少数だった。モンキー乗りが主流になり始めたのは、昭和33(1958)年、保田隆芳騎手がハクチカラとともにアメリカに渡り、外国の騎乗技術を吸収してからだと言われている。

天皇賞(てんのうしょう)
春は京都の芝3200メートル、秋は東京の芝2000メートル(昭和58年までは春と同じ距離だった)で争われる天皇賞。優勝馬の馬主に菊の紋章の入った天皇楯が贈られることから、「楯」の愛称でも親しまれている古馬のGIレースだ(昭和62年から4歳馬も出走可能となった)。 このレースはそもそも明治38(1905)年、横浜のレースクラブが、明治天皇から下賜された賞杯を賭けて争った「エンペラーズカップ」に始まる。その後、「帝室御賞典競走」と名を変え、大正から昭和初期にかけ、日本各地で開催されたが、日本競馬会の設立をきっかけに昭和12(1937)年、春と秋の2回に統一され、32(1947)年秋からは名称も「天皇賞」に。また、55(1970)年までは、1度天皇賞に勝つと2度と出走ができなかったが、その制度が廃止され、何度でも優勝を狙えることになったんだ。

伝貧(でんぴん)
正式病名の「馬伝染性貧血」からもわかるように、馬の法定伝染病のひとつ。ウイルスによって感染し、貧血と40度以上の発熱を繰り返して、次第に衰弱していくコワーイ病気。馬の病気のなかでも致死率がきわめて高いうえに、伝染力が強いため、競馬サークルでは最も恐れられている病気のひとつだ。

電話投票システム(でんわとうみょうシステム)
電話さえあれば、どこからでも馬券を購入できるシステム。JRAと電話投票の契約を結び、銀行口座を通じて、支払いや払い戻し金の受け取りが行われる。会員は適時、募集されるが、抽選に通って初めて加入できる。

当歳馬(とうさいば)
その年に生まれた馬で、1歳馬のことを指す。当歳仔(とねっこ)とも言う。馬の歳は数え年だから、生まれた年が1歳、年が明ければ2歳になる。 競走馬の場合、 1歳の秋までは母馬と一緒に過ごすが、それ以降は別になり、デビューに向けて本格的なトレーニングが始まることになる。 

当日輸送(とうじつゆそう)
レースの当日、競走馬をトレセンから競馬場に運ぶこと。中央開催の場合はもちろん、ローカルでも美浦トレセンから福島競馬場、栗東トレセンから中京競馬場など比較的距離が近く、交通の便がいい場合も、当日輸送されることが多い。 輸送に伴う疲労や馬体減りが懸念材料となるが、人間と違って馬には乗り物酔いがないため、30時間ぐらいまでの長時間輸送なら大丈夫であるらしい。輸送馬よりも地元滞在馬のほうがコンデイションを整えやすいことは言うまでもないけどね。

同着(どうちゃく)
2頭が同時にゴール板を通過することがある。これが同着だ。同着だと払戻しはどうなるのか。馬券ファンとしては、これが1番興味のあるところ。たとえば1着が同着となった場合、勝ち馬は2頭いる。だから、当然単勝は2頭とも払い戻され、連複は1着馬2頭の組み合わせとなる。 また、2着同着だとすると、連勝馬券は2通りでき(同枠の2頭が同着の場合には枠連は1通り)、両方の組み合わせが払い戻されることになるんだ。かつて決勝審判委員が肉眼だけで判定していた時代は、同着もずいぶんとあったようだ。しかし、現在はスリット(縦線)の入る特殊なフォトチャートカメラで撮影されるゴール写真をもとに着順、着差が判定されるため、あまり同着なんて見ることはなくなった。

頭絡(とうらく)
ハミを吊り、馬の回の中に入れる馬具のこと。細い革でできており、頭・あご・ほほ・うなじを結んでいる。馬の頭部を固定することが目的。いくつかのタイプがあり、ハミがよりしっかりと固定できるように、鼻の上や目と目の間にも革を通す慎重を期したものもある。パドックでメンコをしている馬を見る場合、頭絡の上にメンコをつけていれば、パドックでイレ込まないようしているだけでレースのときには外して走るが、頭絡の下にメンコをつけていればそのままレースに出走することがわかる、なんて知ってると、ちょっと通ぶれるかも知れないな。

特配(とくはい)
特別払い戻しのことだが、もう死語かもしれない。正規に行なわれたレースにおいて、勝った馬に1票も投票されていなかった場合、そのレースの投票券(馬券)に対し、1票あたり70円の払い戻しが行なわれる規定があるのだ。

特別レース(とくべつれ―す) メインを張れる競走のことなんだ。もちろん、その中でも重賞と呼ばれるグレード・レース(GI、GⅡ、GⅢ)が1番で、条件戦やオープンの特別レースが控えてるというわけ。 専門紙などで、この特別レースを見分けるのはホントに簡単。名前のついてるレースを見つければいいんだ。たとえば「キャピタルステークス」「両国特別」「葉牡丹賞」など、ステークスとか特別、賞とつけられたレースがそれだ。 特別レースは、普通、 1日3レース開催されるけど、日本ダービーなどビッグレースが行われる日には5レース程度に増やされる。しかも、特別レースの勝ち馬はレース後、ウィナーズサークルで表彰式が催されるので、お祭り気分はいやがうえにも盛り上がろうというもの。賞金も同じクラスの平場レースにくらべて35パーセントも割高だから、馬主や調教師など関係者のみなさんも特別にイレ込むレースなんだよね。

時計(とけい)
競馬というのは基本的に勝ち馬を推理するゲーム。この推理の手掛かりとなるのが「時計」なんだ。たとえば、直線最後尾から、豪快に全馬を差しきって1着となった馬がいたとする。この馬の上がり3ハロン(ゴール前600メートル)が37秒、ラスト1ハロンが12.8秒。かたや同じ距離のレースで先行しながら5着となった馬の上がり3ハロンが36秒、ラスト1ハロンが11秒8だったとする。着順や勝ち方だけ見れば、1着の馬の方がいいのだが、時計を比較してみると5着の馬の方が断然いい脚を使っていることになる。このことから、1着馬は相手に恵まれ、5着馬は強豪揃いだったと推測できる。 また、その馬のその距離での最高タイムを持ち時計といい、同じ距離で比較すれば、各馬の競走能力の目安にすることができるのだ。もちろん馬場コンディションや競馬場の違いにも時計は左右される。一般的に、雨の日のコースや芝が重くて深い競馬場などは「時計のかかる馬場」と言われ、比較する際にいくぶん割り引いて考える必要がある。このように、競馬における時計はとても大切。だから、専門紙などには走破時計や持ち時計、調教タイムが細かく掲載されている。

トップハンデ
強い馬、実績のある馬ほどハンデは増えていく。なかでも1番重いハンデを背負った馬や、その負担重量をトップハンデと呼ぶ。 ただ、現在は最も重くても63キロ程度。最軽量は48キロと決められている。

トマリ
繁殖牝馬が受胎すること。つまり、命中だ。 競馬は血のスポーツと言われるだけに、競走馬には現役時の競走成績だけでなく、優れた子孫を残す繁殖能力が必要となる。通常、種付けした牝馬が受胎する確率受胎率)は80パーセントぐらいで、受胎するまでの種付け回数は平均1.8回と言われるが、なかにはこのトマリが悪くて(空胎)、何年も出産できない牝馬もいる。こうなると、1人っ子の跡継ぎ息子の嫁ではないが、立場がなくなる。

トモ
①後脚のこと。 ②後躯の部分。馬の身体は、前躯、中躯、後躯に分けられる。

トライアルレース
3歳クラシックレースと秋華賞の前哺戦として行われるレース。上位の成績を残せば、本番への出走権をもらえる。菊花賞に対する神戸新聞杯、皐月賞に対する弥生賞などのことをさす。

トラックマン
もちろんダンプの運転手のことではない。トレセンでの調教や厩舎関係者を取材し、レースを予想する専門紙の記者のことをいう。紙面には略してTMと書いてあったりするが、このトラックマンの中にも2種類の専門職がある。1つはウォッチマン、直訳すれば時計男だ。調教では、同じコースで次々と馬が走って時計を出す。 1度に何頭もの馬が走っているなんてザラだ。しかし、ウォッチマンは、その1頭1頭の調教タイムをひとつも漏らさず正確に計るのである。体内にストップウォッチを埋め込んだサイボーグとも言われるほど、 もう1つは想定班。彼らは調教終了1時間後から、厩舎回りをして調教師や調教助手、騎手からコメントをとり、長年の勘と調教タイムから予想を立てる。 しかし、火曜から日曜日まで、どっぷりと競馬漬けになって取材しても、なかなかズバリと当たらないのが、競馬の難しさだ。

ドリンク
飲む=ノミ行為のこと。 ノミ屋はこのドリンクを専門にやっている私設の馬券屋。馬券を買いたい人からお金を預かり、手数料(=テラ銭)を取って代わりに馬券を買うことになっているが、実際には、馬券を買わずに着服してしまうことが多いのだ。もちろん、ノミ行為は競馬法で厳禁されており、馬券を頼んだ人も法律で罰せられる。

トレセン
トレーニングセンターを略してこういう。厩舎や、芝、ダート、ウッド、坂路といった調教コース、馬の病院、調教師、騎手など関係者の住宅がある。馬は2歳になると、生まれ育った牧場からこのトレセンに移されて、調教師のもとで競走馬としてのトレーニング を積むんだ。そして、トレセンから競馬場入りして、レースが終わるとまたトレセンに帰ってくる。中央競馬の場合、関東には茨城県の美浦トレセン、関西には滋賀県の栗東トレセンがある。よく関東馬、関西馬と言われるが、これは生まれた場所ではなく、馬が所属するトレセンによって決まる。

な行
ナイラ
腺疫連鎖状球菌の感染による急性伝染性疾患のこと。 普通は風邪の意味で使われる。 馬の風邪を「内羅」と書いたことから、こう呼ばれるようになった。

中一週(なかいっしゅう)
競走馬の出走間隔のひとつ。馬柱を見れば分かるとおり、標準的な出走ローテーションは中2~4週だ。だが、なかには中5週とか中6週空けないと走らない馬もいるし、その反対に中1週でバリバリと走る馬もいる。もちろん、このローテーションは馬の調子や個性によって違ってくるので、一概にどれがいいということは言えない。安定して同じ間隔で走っているのなら、それがその馬にとって1番いいということなんだな。 ただ、中4週で走っていた馬が突然、間隔を詰めてきた中1週は要注意。こんな場合の中1週には、2つの意味がある。ひとつは勝負がかり。現在、絶好調だから、すぐに使いたいということ。あるいは、どうしても使ってみたいレースがあるということだ。 ふたつ目の意味は、駆け込み出走。馬が好調を持続できるのは、およそ2、3ヶ月ほど。結果はともかく、とりあえずピークを過ぎる前に使っちゃえ、ということ。 また、中1週どころか2週続けてレースに臨む馬がいる。これを連闘といい、太目解消のためだったり、前走の負けが納得できないためだったりする。

流し馬券(ながしばけん)
連勝複式(馬番連勝または枠番連勝)馬券を買う時に用いられる方法の1つ。1着か2着に入る可能性の高い馬を軸として、他の何頭かの馬と組み合わせて買う。

中山大障害(なかやまおおしようがい)
昭和34(1959)年に創設された障害最大の花形レース。中山競馬場で春秋の年2回、芝の距離4100メートルで争われる。 世界最大の障害レース・英国グランドナショナル競走などと比べると子ども編しにも見えちゃうが、大竹柵や大土塁、深さ約6メートルのバンケットなど11の障害をクリアし、坂も6回走破しなければならず、耐久力とスピードを要求される過酷なレースと言える。ただ、昔は出走頭数も多かったこともあって、落馬シーンも少なくなく、各馬が障害を飛越するたびに悲鳴と安堵の溜め息が混ざり合った緊張感溢れる独特のムードがあったが、最近は頭数もスケールも小粒になって、ホントに残念だ。

ナマコ
どの世界にも真剣にケイコに取り組まないナマケものがいるが、競馬では「ナマコ」と言う。「生半可なケイコ」が縮まって生まれたという説もあるが、ホントのところはわからない。「ケイコではいつもナマコ」というように使われ、ナマずるいと同義語。とくに、 幼さが残る2歳馬に多くみられる。

鳴尾記念(なるおきねん)
明治40(1907)年に兵庫県鳴尾村でオープンし、昭和18(1943)年まで使用された競馬場の名からつけられた。4歳以上の混合戦で、阪神で行われる距離2000メートルのハンデレース。GⅢだ。61(1986)年までは、京都で春行われており、春 の天皇賞の前哨戦的な色彩が強かったが、現在は暮れの名物レースとして、やや小粒なB級馬の争いの場となっている。

逃げ(にげ)
スタート直後から猛ダッシュして、馬群の先頭に立つ馬がいる。こうした馬のことを「逃げ馬」といい、この戦法を「逃げ」と呼ぶ。 逃げは先行、差し、追い込みに比べて自分がレースの主導権を握るので、その分有利。道中、なるべくスローペースに持ち込んで、直線まで脚を残し、そのままゴールインを狙う。不良馬場では特に効果的な戦術である。これがうまく決まることを逃げ切り、たとえ 差されてもなんとか2着に入ることを逃げ残りという。また、 1番手、2番手の馬がそのまま逃げ切ることを「行った、行った」という。

二走ボケ(にそうボケ)
長期の休養をとっていた馬が鉄砲使いで好走した後、次のレースで惨敗すること。

二頭出し(にとうだし)
同じレースに、同一の厩舎または馬主が2頭の馬を出走させること。 何が何でも勝ちにきていると考えられることから、馬券戦術では狙い目と言われている。また、「2頭出しは人気薄を狙え」というセオリーもあるけど、統計結果を見ると人気薄の馬が上位に来る確率は3割程度にすぎないようだから、セオリーだけで飛びつくのはやめたほうがいいかもね。

2人びき(ににんびき)
パドックでふたりの人間が、出走馬の手綱をとって周回すること。気合いがのった馬や気性の荒い馬などの場合に、二人びきされることが多い。

二の脚(にのあし)
レースの最後の直線で、息切れしたように見えて、ムチなどを入れると、再び息を盛り返してくること。

入着級(にゅうちゃくきゅう)
そのレースで勝ち負けは難しいとしても、2~3着、あるいは掲示板に載る可能性のあることを指す。「GIでも入着級の力がある」というふうに使う。 競馬の予想などでは、全くのノーマーク(無印)にはできないけど、かといって重い印(◎や○)もつけられない、連対の押さえ程度の評価を意味することが多い。

熱発(ねっぱつ)
馬が熱を出すこと。調教を休めば治るが、レースには悪影響が出ることが多い。「―のため出走回避〔=熱発が理由で、そのレースに出走することを見合わせること〕

年度代表馬(ねんどだいひようば)
昭和47(1972)年から始められた表彰で、昭和61(1986)年までは中央競馬会発行の雑誌「優駿」が主催。その後は「JRA賞」として制定されている。 この年度代表馬に名を連ねる馬たちは、まさにキラ星のごとく輝いた名馬ばかり。第1回のイシノヒカルをはじめ、タケホープ、カブラヤオー、トウショウボーイ、テンポイント、ホウヨウボーイ、ミスターシービー、シンボリルドルフ。もちろんオグリキッャプもその1頭だ。

残り目(のこりめ)
逃げ馬や先行馬が展開に恵まれて2着(または1着)にギリギリ粘り込むことを指す。「○○の残り目にも注意したい」などというふうに使う。 たとえ逃げ馬でも有力馬や人気馬の場合にはこの言葉が使われることはなく、あくまでも人気薄の逃げ馬や先行馬が対象となる。行った行ったで決まったレースなどは、まさに残り目が現実のものとなる典型例だな。万馬券が出るときは往々にして残り目のケースが多いから、とくに先行馬有利のダート戦などでは、穴党ならぜひ押さえておきたい馬券と言える。

ノド鳴り(のどなり)
文字通り呼吸器に発症する一種の職業病で、喘鳴症(ぜんめいしょう)とも言う。人間であれば喘息であるが、競走馬にとってはこれが致命傷にもなりかねない。 とくに、能力のある馬ほど発生率は高い。この病気にかかった馬は、雨天や湿度の高い日には呼吸が楽になるため好走することもあるが、空気が乾燥した日に人気になれば、またとないお客さん(カモ)となるから覚えておこう。

ノメる
競馬では、重馬場や不良馬場で馬が地面を蹴ったときにズルッとすべることを言う。とくに、ツメの大きい馬やベタヅメの馬はノメリやすく、道悪競馬を苦手とするケースが多い。

乗り味(のりあじ)
文字どおり、馬に乗ったときの乗り心地を指す。 騎手はケイコで馬に1度乗つただけで、走る馬と走らない馬の判断がつくというが、当然、乗り味のいい馬は圧倒的に走る馬が多い。

乗り替わり(のりかわり)
騎手はたいてい決められた馬に乗る。たとえば7冠馬シンボリルドルフは新馬デビューから引退まで、鞍上は岡部幸雄騎手と決まっていた。これを称して「ルドルフは岡部騎手のお手馬」と言ったりする。ところが、さまざまな理由から、乗り役を変わることがある。これが乗り替わりだ。手替わりとも言う。 乗り替わりの理由としては、お手馬が同一レースに出走する場合、あるいは騎手がケガをした場合などがあるが、最も多いのが鞍上強化と呼ばれるもの。乗り役の決定権を持つ調教師が、今まで乗っていた騎手よりも実績が上の騎手に騎乗依頼して、乗り替わってもらうことだ。

は行
配合(はいごう)
配合とは、強い馬をつくるために、肌馬(繁殖牝馬)の性質や血統などを考えて、最適の種牡馬を決めること。 配合させる。生産者にとっては、配合を考えることが、ビジネスのすべてになる。強い馬を作るためには様々な法則があるとされるが、そこはやっぱり生き物、配合を決めるのは、ホントに難しい。

ハイペース
レースの流れが速いこと。「ハナの競り合いで― 〔逃げ馬何頭かが先頭を奪い合って、レースの流れが速くなること〕」

歯がわり(はがわり)
馬も人間と同じように、乳歯から永久歯に歯が生え替わる。歯がわりの時期は2~4歳の間で、当然、この時期はカイバの喰いも悪くなるので、調子を崩す場合も多い。 ちなみに、馬の歯の本数は、牡で40本、牝で36本と、牡と牝とでは違う。また、馬の場合、抜けそうな歯に糸を結んで引っ張ったり、抜けた歯を屋根や縁の下に投げたりする習慣はないようだ(あるわけないよな)。

拍車(はくしゃ)
馬に乗るとき、クツのかかとにつける金具。先端のギザギザになっている部分を馬の腹に強く押しつけて刺激することを「拍車をかける」などと呼ぶ。こうすることで、馬を加速させることができるのだ。 一般的に使われている、仕事やものごとの進行を1段と促進させる意味の「拍車をかける」は、この競馬用語が語源になっている。

白斑(はくはん)
主として馬の頭部と脚に現われる白い毛。馬の個性を識別する特徴になるので、血統登録証書に詳しく記載される。 頭部の白斑は、額に自斑がある星、星が鼻面の方に流れている流星、額から鼻梁にかけて真っ直ぐに白い線が入っている作など、35種類に分けられる。 脚の白斑には様々なジンクスがある。たとえば、4本の脚のなかで左後ろ脚だけがしろい左後1白は、3冠馬のシンドリルドルフをはじめ、一流の競走馬に出世する馬が統計的に多い。逆に4本脚のうち、3本に白斑が入った「3白」はなぜか走らない馬が目立つのだ。医学的根拠はまったくないらしいが、パドックで馬を観る時、参考になるかもしれないな。

馬群(ばぐん)
馬がレース中にダンゴ状態で固まっているような、文字どおり馬の群れを指す言葉。馬群のなかでも、先頭とシンガリの真ん中あたりの集団を中団と呼ぶ。差し馬の脚質のなかで中団差しといえば、第ニコーナーを越えるくらいまでは中団で構えておいて、第4コーナーから一気に追い込みをかける攻め方だ。 中団よりさらに後方のポジションどりでレースを進め、第4コーナーを越えたあたりから一気にビッチを上げて、直線でダンゴ状態になっている先行馬たちの間を縫うようにして先頭に出てくるのを「馬群を割る」と言う。しんがりから、目を見張るような加速でバンバン先行の馬をパスしていくさまは、競馬ファンがもっともエキサイトする瞬間のひとつだな。

馬券(ばけん)
勝馬投票券の俗称。100円単位で買え、手にするだけで競馬を何百倍も面白く見れるという魔法のアイテムだ。馬券にはおおまかに分けて単勝式、複勝式、連勝複式の3種類がある。まず単勝式とは、1着に来る馬を当てる馬券で、買った馬が勝てば当たり、負ければハズレ。至極単純明快。競馬の基本とも言われてる。 2つ目の複勝式とは、出走馬が8頭以上なら3着まで、7頭以下なら2着まで来る馬を当てる馬券。当たり馬券は3(2)種類あり、当たる確率は単勝式の3(2)倍になるが、払い戻し倍率は、その分かなり低い。1.3倍なんて当たり前、ダントツの人気馬の馬券だと買ったままの金額で元返しなんてこともある。 さて、これらの馬券に対して、連勝複式(連複)は少々異なる。連複には馬番連勝(馬連)と枠番連勝(枠連)の2種類があり、2着以上に来る2頭の馬、あるいは2つの枠の組み合わせを当てなければならない。たとえば18頭立てだとすると、枠連だとゾロ目を含めて36通りの馬券が存在し、馬連は153通り。

跛行(はこう)
歩いているとき、足の出し方の異常な状態。馬体のどこかに異常がある場合に起こることが多い。

肌馬(はだうま)
肌馬とは、種付けして競走馬を産む繁殖牝馬のこと。 引退した牝馬の多くは肌馬になるんだけど、なかにはレースで走らせたことのない、生まれついての肌馬というのもいる。 肌馬は、普通は年に1頭の子馬を産み、生涯に7、8頭、多い場合は15、16頭もの競馬馬を出産するというんだから、すごいよねえ。名牝とは現役当時の競走成績が優秀な牝馬を指すが、子出しがいい馬(競走成績の優秀な子をたくさん生んだ肌馬)も、同様に名牝と呼ばれる。だから、現役当時にたいした成績を残せなかった牝馬も、血統を伝え、肌馬としていい仕事をすれば、競馬史にその馬名を刻むことができるのだ。

馬頭観音(ばとうかんのん)
馬の頭をした仏像のことで、競馬場やトレセンに行けば必ず1ケ所にまとめて祀られている。赤で染められたノボリ旗がたくさん目についたら馬頭観音と思って間違いない。 本来、競馬関係者が管理馬の病気・ケガの回復や安全を祈ったり、レース中や調教中の事故などで亡くなった馬たちを供養したりするところ。

パトロールビデオ
レースの模様を撮影したテープ。審議の際に参考にする。

馬柱(ばちゅう)
専門紙などの出馬表、あるいは出馬表にある各馬のデータ欄のことをいう。大相撲ではよく「土俵に金が埋まってる」と言うが、競馬ではこの馬柱に当たり馬券が埋まっていると言ってもいいだろうな。 専門紙や新聞の種類によるが、一般的に、ここには馬名、父馬、母馬、年齢、性別、脚質、騎手、斤量、厩舎、賞金、馬主、持ち時計、距離別競走成績、前走までの成績などが載っている。前走までの成績欄は、たいてい4走か5走前までが示されている。そして、それぞれに開催回、競馬場、馬場状態、開催月日、条件、頭数、着順、距離、時計、騎手、斤量、ペース、前後3ハロンタイム、レース通過順、勝ち馬か2着馬、タイム差、馬体重、枠順、人気などが、小さなスペースに細かい文字でびっしり。

PAT (ぱっと)
パーソナル・アクセス・ターミナルの略。 ファミコンやパソコンやホームマスター(専用端末機)を使用し、自宅にいながら馬券を購入できたり、オッズ、払い戻し、天候、馬場状態などの情報が得られるラクチンな在宅投票システム。WINSを新たに開設するのが難しい現状にあっては、競馬の明るい未来を予感させるシステム。

ハト小屋(はとごや)
競馬場に行ったら、コースに沿ってあちこちに立てられている鉄塔に目をやってほしい。これが「ハト小屋」。ハト小屋に形態が似ている塔の正式名称は、パトロールタワー(監視塔)。発走合図があったら、騎手は他馬を妨害することなく、かつ全能力を発揮して競走を行ない、ゴールインしなければならない。ハト小屋内にスタンバイしている走路監視員は、馬の能力が十分発揮されたか、競走中にインターフェア(妨害)がなかったか、騎 手の騎乗ぶりはどうかなどを、パトロールビデオを回しながら厳しく監視しているのだ。ちなみにハト小屋からの眺めは最高だというが、風が吹くと震度3くらいで揺れるらしい。監視員に必要なのは、審議を申し出る勇気だけじゃないようだ。

ハナ差(はなさ)
先着馬との着差の最小差の単位。このハナ差の次がアタマ差。そしてクビ差、3分の1馬身差、4分の3馬身差、1馬身差、1馬身4分の1差と続き、4馬身以上は分数表示がなくなり、10馬身差以上は大差となる。ただ、アタマ差以上ならともかく、肉眼でハナ差と見分けるのは至難の技。なんてったって秒速17メートルで頭をふりふり、ゴール板を通過するんだもんなぁ。そこで、決勝審判委員が肉眼で判断できなかった場合には、ス リット(縦線)入りのフォトチャートカメラで撮影された決勝写真で、着順と着差を確認することになっているんだ。

鼻ネジ(はなねじ)
「鼻捻棒」の略で、馬の鼻をねじって痛みを与えることによって、気を鎮めたり、言うことをきかせたりするために使う。同じような目的で使われるものに、耳ネジ(正式には「耳捻棒」)がある。馬は耳のほうがより敏感なので、鼻ネジよりも痛みが強く、効き目があると言う。

ハナを切る(はなをきる)
スタートから先頭に立ってレースをリードすること。

馬場差(ばばさ)
芝コースでは、よほど変わり者の馬ではない限り、良馬場よりも、重馬場で走った時のほうが時計がかかる。馬場差というのは、そんな場合に出るタイム差のこと。 馬場差を正確に計る方法はないが、一般的には、良馬場のタイムを基準として、やや重だったらプラス1秒、重だったらさらにプラス1秒、不良の場合はさらにプラス2秒、という計算で予想を立てている。

ハミ
馬の口にくわえさせる棒状の金具。ハミに手綱をつけ、騎手は自分の意思を馬に伝える。

腹帯(はらおび)
馬に鞍を固定するためにつけるベルトのこと。鞍の片側についており、馬の腹に回して、鞍の逆側で止めるようになっている。 布製とゴムの入った伸縮性のあるものがあり、また一重のものと上腹帯(鞍の上にかける帯で、よりしっかりと固定できる)がついた2重のものとがある。緩むと鞍ズレになるし、かといって締め過ぎると馬が気にして集中力を欠く原因にもなるなど、腹帯ひとつ装着するにも経験がいる。

馬齢重量(ばれいじゅうりょう)
これは馬の年齢と性別によって決められた負担重量だ。 たとえば平地レースの牡馬の場合だと、2歳10月までが53キロ。それ以後は2歳12月まで54キロ、3歳12月まで55キロ、4歳5月まで56キロ、5歳8月まで57キロと1キロずつ増え、5歳9月以降はまた1キロ下がって56キロになる。 これが牝馬になると牡馬に比べて重量はだいたい1~2キロ少ない。3歳12月まで53キロ、4歳5月まで54キロ、5歳8月まで55キロ、そして5歳9月以降はまた54キロとなる。この馬齢重量の通り行われるレースは馬齢戦と呼ばれ、平場レースのほとんどがこれ。重賞でもオールカマー(GⅢ)や有馬記念(GI)が馬齢戦。

ハロン
正式には、1 ハロン=201.17メートル。日本の競馬では、1 ハロンとは200メートルのことを指す。

番組(ばんぐみ)
競馬で言う番組とはレースのことを指し、競馬会から発表されるレースの予定表を「番 組表」と呼ぶんだ。 また、競馬場で配付する当日の出走表「レーシングプログラム」は無料だから新聞なんかなくても競馬が楽しめる。

バンデージ
一般的にも使われている言葉で、競馬の場合は、脚を保護するために巻く包帯のような布を指す。 休息時などに球節から管部に巻くもの(俗にバンジツやゲートルとも言う)や、クモズレ防止のためのもの、故障箇所の保護に巻くものなどがある。

ハンデキャップホース
サラリーマンの世界では、運よく出世したものの、位負けでかえって苦しむケースが少なくないが、競馬の世界でもそれと同じように、運よく昇級できても壁にぶち当たって、同じ条件ではどうあがいても勝負にならない馬もいる。こんな馬たちを救ってくれるのが斤量に差をつけるハンデ戦。で、軽ハンデのときに限って活躍する馬を「ハンデキャップホース」と呼ぶ。

ハンデ戦(ハンデせん)
馬の能力は各馬によってかなり異なる。それを均一にしようと負担重量を馬の実力によって変えて行われるレースがハンデ戦。正しくはハンデキャップ戦という。 このハンデ戦が始まったのは18世紀の英国から。当時の競馬というのは出走馬の顔ぶれがいつも同じ。強い馬が、まさにハンデ押したように必ず勝っていた。そこで重量に差をつけようというということになり、いろんな重さを書いた紙を帽子の中に入れて、馬主たちが引いたんだ。帽子の中に手を入れるから、 ファンド・イン・キャップ。これがハンデキャップの語源だと言われてる。 もちろん、現在、ハンデキャッパーと呼ばれる人たちが、馬の実績や能力、性別を考慮して決めている。ハンデ戦に出走するには決められた期間に重賞レースか特別戦レースに出走していることが条件。また、ハンデの最高は63キロ、最低は48キロに定められ、実力馬なのにハンデ重量が低い馬は「ハンデが甘い」などと言われる。

反動(はんどう)
一般的に使われているのと同じように、良い方向の動きに対するゆり戻しを指し、「レコード勝ちした反動が出た」「無理づかいの反動が出た」というふうに使う。

坂路(はんろ)
東西のトレーニングセンター内にある調教用コース。

左回り巧者(ひだりまわりこうしゃ)
左回りのコース、つまり中央競馬ならば東京競馬場と中京競馬場で好成績を残す馬を指す。別名「サウスポー」とも呼ばれる。 これには、利き脚や、手前を替えることの巧拙のほかに、コースの形態(たとえば、東京競馬場はコースが広く、直線が長いので追い込み馬に有利)なども関係している。

引っ掛かる(ひっかかる)
① レースなどで、馬と騎手の呼吸が合わず、折り合いを欠いた状態。
② 騎手が手綱を絞ってペースを抑えているにもかかわらず、指示に従わず突進してしまうこと。=持っていかれる〔→←持ったまま〕

一息入る(ひといきはいる)
1カ月以上レース間隔があくこと。

飛節(ひせつ)
人間で言えば、膝の関節にあたる、馬の後ろ脚にある関節。人間とは逆に前方向に折れるようになっている、あの特徴的な関節のことだ。 通常より角度のきつい飛節を曲飛節と呼ぶが、こういう馬は踏み込みが浅く歩幅も狭くなりがちなので、一般的にはレースに不向きとされている。

ひと叩き(ひとたたき)
目標のレースの前などに1回レースを使うことを言う。「休養明けのひと叩き」「本番前のひと叩き」なんて感じで使われる。GIレースともなれば、少なくともひと叩きした馬でないと勝負にならなかった。有力馬が格下のオープン特別などに出走してきたときなど は、調整を主目的としていると考えて馬券を手控えるのが基本だろうが、実力があるだけに、ひと叩きのつもりでもあっさり勝っちゃうこともある。ひと叩きの見極めは、なかなか難しい。

独り旅(ひとりたび)
一般的に「独り旅」と言うと、何かワケありの旅行を意味する場合もあるが、競馬の場合は文字どおり、後続馬を何馬身も離してぶっちぎりで独走している馬の状態を指す。後続馬を10馬身以上引き離す大逃げを図っている単騎の逃げ馬を形容することが多い。

ヒモ
連勝複式の馬券検討をする場合、軸馬を決めた後に探す相手馬のこと。軸からぶら下がる様を指してヒモと言われる。このヒモを探すことを「相手探し」などと美しく呼ぶこともある。ところで、ヒモは少なければ少ない方にこしたことはない。だが、なかなか1本だけに絞るのも難しい。あれもこれもと迷っていて結局、軸から総流しなんてことも結構ある。そうなると安目が来た時、投資額に見合った配当があるかどうかが問題。

平場(ひらば)
条件戦クラスのレースで、「○○特別」「○○賞」「○○ ステークス」というぐあいに、レースの名称がついていないレース。

プール調教(ぷーるちょうきょう)
脚部に不安をもつ馬が、リハビリ用プールで行う調教のことを指す。 リハビリ用プールは、福島県いわき市のJRA施設や、栗東トレセンにある。水中では身が軽くなる一方、抵抗もあるから、水泳は脚に負担をかけないで適度なトレーニングができるわけだ。

ふくれる
コーナーの内側をうまく回れずに、コーナーの外側を回ること。その分、距離のロスは大きくなる。

フケ
牝馬が発情すること。3週の周期で春から初夏にかけて発情し、レースでは集中力を欠くことが多い。

負担重量(ふたんじゅうりょう)
競走馬が背負う鞍と騎手を含めた重量のこと。出走馬の年齢、性別、実績、能力、近走状態の中から、レースの条件によって負担重量が決定される。逆に言えば、負担重量の条件によってレースはおおよそ3つに分けられることになるんだ。 そのひとつが馬齢戦。これは、出走馬の年齢と性別によってのみ負担重量が決められるレース。基本的に年齢が上がると重量も上がるシステムになっている。また、ハンデ戦は出走馬の能力や実績を中心にハンデキャッパーが負担重量を決めるレース。 3つ目の別定戦は各レースに独自に定められた重量条件のあるレース。年齢、性別以外に獲得賞金や勝利数などによっても負担重量が違う。ただし、この別定戦の中には、馬の年齢と性別だけで負担重量を固定した定量戦と呼ばれるレースがある。

太目(ふとめ)
腹部や背中、トモ(腰)に余計な脂肪が付き、その馬が好走するベスト体重よりも重いことをいう。これはハードな調教ができなかったのが原因という場合が多いが、ケイコ不足を幕は待ってはくれないんだよなあ。 だから、レースの途中で息があがって追走するのが精一杯だったり、直線でバテバテになったりする。ただ、その次のビッグレースに照準を合わせ、ギリギリではなく、わざと太目の仕上がりにしておくという調教テクニックもある。つまり、ひと叩きするだけということ。実力馬がGIレースヘのステップとして出るレースに、こうした太目残りの仕上がりが多い。それでも勝ったりするんだよね。

踏み込み(ふみこみ)
競走馬にとっても調子を見るうえで大切なポイントのひとつ。 具体的には、後ろ脚が前へ進むときに前脚のほうヘ深く入り、後ろ脚と前脚が一瞬交差しているように見えた場合などに、「踏み込みがいい(深い)」と言う。トモの運びがグイッグイッと力強く感じられれば、その馬は好調と見ていいはず。

冬毛(ふゆげ)
馬は寒さに備えるため、冬は自然に毛が伸びるので、毛づやは悪くなりがちだ。冬に生えるこの毛足の長い毛を「冬毛」と言う。 当然のことだけど、ほとんどの馬が冬毛で毛づやが冴えないなかで、毛づやがいい馬を見つけたら体調絶好調と思って間違いない。反対に、冬毛がボサボサとだらしなく伸びた馬はたいてい寒さに弱く、暖かくならないとレースで走られない体質の馬が多い。期待できないとみたほうがよさそうだな。

フリーハンデ
レースとは関係なく、ハンデキャッパーや評論家によって毎年つくられる馬の強さを示すランキング表のこと。ハンデが重いほど、能力が高い強い馬と評価されたことを示す。

不利(ふり)
いい位置に付けていた差し馬が最後の直線にさしかかって、ここで一気に! というところで前が詰まったり、他の馬の斜行に阻まれてブレーキがかかってしまった時などに、「不利を受けた」と言う。 前走で不利を受けた馬は、一般的によく走るとされており、穴馬券のセオリーとして注目される。活字上では同じ順位でも、不利を受けずに4着の馬と、不利を受けて5着の馬では、その着差は大きく逆転すると言っても過言ではないのだ。だから、いくら競馬が「統計のギャンブル」だと言っても、着順のデータだけを見ているようでは、いつまでたっても予想はうまくならない。

ブルードメア・サイアー
ブルードメアは繁殖牝馬、サイアーは種牡馬だから、母馬の父のこと。競馬新聞の馬柱にある馬名欄の左下(母名の下)に記されていることからもわかるように、血統から馬の能力を分析する場合、きわめて重要な要素となる。 競馬の場合、父馬が同じでも性格や距離適性などが全く違う馬も少なくないが、これは母系の血統の影響が大きいことを物語っている。とくに、馬は人間とは比べものにならないほど隔世遺伝の力が強く作用するため、交配する種牡馬を選ぶ際、ブルードメア・サイアーの血統は大きなポイントになるわけだ。

フルゲート
レースはコースや距離、シーズンなどによって出走可能な頭数がそれぞれ決められている。定められた出走可能数いっぱいに馬がエントリーした状況をフルゲートと呼ぶ。現在の出走可能頭数は、ダービーやオークスなどのビッグレースでも18頭である。 出走馬の数が、12頭以上の場合を多頭数といい、さらにそれ以下で、8頭を割るような場合を少頭数と呼ぶ。

フレーメン
フレーメンは馬が頭を上げ、上唇をめくり上げるしぐさ。 ある種の匂いを嗅いだときに反射的に起こすものだが、気分のいいときに多いと言われているからな。 ただし、パドックやレースの時にこのしぐさが見られるのは、気が散っている証拠となるので、マイナス材料とみたほうがいいかも知れないぞ。

フレグモーネ
傷口から細菌が入ることによって発症する急性の皮下組織の化膿症のこと。競走馬がよく罹りやすい職業病のひとつ。 人間でいえば「おでき」「腫れ物」の類だが、馬の場合、症状の進行が速く、一晩で傷口を中心に腫れ、熱と痛みを伴うことが多い。大抵は2~3日で腫れがひき、稽古を再開できるけど、悪い菌が入ると致命傷にもなりかねよく「フレグモーネのため出走取消」などというコメントが出たりするが、万が一、軽傷で出走してきた馬がいたら、「腫れ物には触るな」が賢明だな。

フロック
まぐれ。実力下位の馬が、展開などにめぐまれてまぐれ勝ちしたり、好走したりすること。

平均ペース(へいきんペース)
ハイペースとスローペースの中間のペース。

平坦馬場(へいたんばば)
中山競馬場のゴール前200メートルから始まる急な上り勾配、東京競馬場の長~い直線走路の中盤約200メートルのダラダラ坂、西では京都競馬場、第3コーナーのカーブにある通称「魔の坂」など、競馬場のコースには、レースを興味深くするためのアップダウ ンがあらかじめ設けられている。これに対して、福島競馬場や新潟競馬場、札幌競馬場などは、比較的なだらかなコースだといえる。こういう平らな馬場のことを、平坦馬場とか、フラットコースと呼ぶ。平坦馬場では、非力な逃げ、先行馬が活躍する。府中や中山でさっぱりだった馬が、ローカルの平坦馬場で走ったとたん、ビックリするような好走を見せることがよくあるのだ。

ベタヅメ
「ベタゾメだから道悪はからっぺた」などというふうに使う。人間でも偏平足(=ベタ足)には鈍足が多いなどと言われるが、足の裏に凹凸がないとキックが効かずなかなか加速しないわけだな。とくに滑るような馬場では、ノメって力が発揮できなくなるのも容易に理解でき反対に、水たまりができるような不良馬場になるととたんに成績が良くなる馬を、水かきがついているなどと形容する。

別定(べってい)
別定とは、レースごとに独自の重量条件が定められていること。別定戦の負担重量の決定方法は、まず馬の年齢と性別から基礎になる重量を算出。その基礎重量に、過去の獲得賞金額や勝利数、特定のレースの勝利などの要素から割出された負担重量を加える。ほとんどの特別レース、障害のオープンレース、それに一部の重賞レースはこの別定戦で行なわれている。 さらに、別定戦のなかでも、馬の年齢と性別だけを基準に負担重量を決定するのが定量戦。馬の年齢、性別で負担重量を決めるあたりは馬齢戦に似ているが、定量戦の場合は馬齢戦の重量決定表にはしたがわずに、各レースごとに設定された独自の負担重量基準に応じて決定される。たとえば、ダービーは、牡57キロ、牝55キロ。天皇賞は牡58キロ、牝56キロといった具合。3歳馬のクラシックとそのトライアル・レース、GIレースの 大半はこの定量戦で行なわれる。

ヘンタをかます
たとえば、厩舎回りの取材で得た「全然走る気がない」といった情報をもとに、馬券から外した馬が好走した場合など、「ヘンタをかまされた!」とボヤくことになる。厩舎陣がマスコミの取材に対して本音のコメントを控えるのを、煙幕をはるとも言う。 まあ、厩務員や調教師だって、うかつに「この馬は絶好調だよ」なんて話したら、実力以上に人気となってマークがきつくなる恐れもあるのだから、ヘンタをかますのも、仕方がないと言えば仕方ない。

放馬(ほうば)
極度に興奮した馬が、騎手を振り落として勝手に走ってしまうこと。

放牧(ほうぼく)
馬を牧場に帰して休養を取らせてやること。身も心もリフレッシュさせるために放牧に出す場合と、故障の治療でやむをえず牧場に帰す場合のふたつのケースがある。 馬も放牧明けのレースでは、今ひとつ振るわないことが多いので、予想を組み立てる際にはその辺に注意するといいだろう。

ホースマン
馬に関係した職業に就いている人々の総称。馬主、生産者、調教師、厩務員、騎手といった人々をはじめ、競馬会で働く職員、さらに競馬記者、カメラマンなど、競馬の報道関係者全般、トラックマン、そして、競馬評論家もホースマンのひとりだ。

ボックス馬券(ぼっくすばけん)
馬番もしくは枠番を3~5つ選び、その組合わせをすべて買う、ボックス買いの馬券。ボックス買いとは、ボックスという言葉そのままに、箱型、つまり4角い図形を描くように買う方法だ。本命、対抗、穴っぽい馬の3頭を3角形に組合わせて買うのは3角買い。 この買い方だと、連勝のどんな組み合わせがきてもOK。つまり、取りこぼしがないから、確実性は高い。だけど、反面、買い目がやたらに増えてしまい、せっかく的中させたのに利益が薄いとか、ひどい時にはかえって損する、なんてことになりかねないのだ。 ボックス馬券で買う時は、4頭を選んでそれらを網の目状に買うのが、基本かな。

歩様(ほよう)
読んで字の如く、馬の歩く様子のこと。パドック中継などで、解説者がよく「歩様がよくなっている」などと話しているのを聞いたことがあるだろう。 いい歩様とは、4本の脚が、一定のテンポでリズミカルに動いている感じの歩き方。さらに、前脚が踏んだ跡より前に後脚が大きく踏み込まれるようなら、まず間違いなくその馬は好調だと言えるな。

ボロ
馬糞のこと。

本格化(ほんかくか)
期待されていながらも素質を活かしきれず、条件馬に甘んじていたり、オープンクラスでもなかなか勝てずに低迷していたような馬が、素質を開花させて競走成績が飛躍的に良くなってくること。「(ようやく)本格化の兆し」などというふうに使う。同じような意味で、実が入るといった言い方もある。 素質を活かし切れない背景にはさまざまな要因が考えられるけど、肉体面が未完成の場合が圧倒的だ。したがって、競走馬にとって成長期に当たる3歳秋から4歳秋にかけて、肉体の成長とともに本格化を遂げる馬が少なくない。

本線(ほんせん)
単勝、複勝、連複を問わず、自分の1番リキの入った馬券、つまり投資金額が1番多い馬券のことを、本線(本線馬券、主力馬券)という。

ま行
マイラー
1000~1400メートルを得意とする馬はスプリンター、1800~2400メートルを得意とする馬はミドルディスタンス・ホース、2400メートルを越える長距離を得意とする馬はステイヤーと呼ばれ、1600メートルを特に得意としている馬のことを、マイラーと呼ぶんだ。 1600メートル= 1マイルだから、マイラーというわけだ。適性距離は、その馬の父、母のタイプによってだいたい決まってくるんだけど、乗り役さんの実力や調教の仕方次第で、ある程度は変動する。でも「近代競馬の基本」とも言われるマイル戦に強い馬だったら、1400メートルや2400メートルを走らせても、結構通用しちゃうんだけどね。

マイルチャンピオンシップ
マイルCSと書くことが多い。11月中旬に京都競馬場で争われる、1600メートルのGIレース。秋のマイル王決定戦とも言うべきレースで、スワンステークスが一応のステップレースとなっているが、天皇賞(秋)から流れてくる馬や、3歳馬でも3000メートルの菊花賞には興味のない短距離馬など、様々なステップをたどったマイラーがこのレースに挑戦してくる。

前残り(まえのこり)
逃げ馬や先行馬など前でレースを進めていた馬が粘って上位を占めること。「前残りを狙う」とか「前残りの競馬」というふうに使う。 後ろに控えた有力馬が牽制し合っているうちに、ノーマークの逃げ馬や先行馬がマイペースに持ち込んだときに前残りになりやすく、往々にして人気薄の伏兵馬が連勝馬券に絡み、大穴となりやすい。

マルイチ
市場取引限定戦の俗称。市場取引馬とは、セリ市(馬市)で取り引きされた競走馬のこと。アラブはほとんどセリ市で取り引きされるが、サラブレッドの場合は1歳のセリ市の前に、生産頭数の約6割が庭先取引で売買されてしまう。さらに、残った4割のうち、2~3割は自家生産馬であったり、仔分け馬であったりするため、現実にセリ市で取り引きされる競走馬は、生産頭数の1割程度、というのが現状だ。 そのためか、やはり売れ残りといった印象があるし、実際、一般的に言って、マルイチの馬の平均能力はそんなに高くない。 そこで、生まれたのが、市場取引限定戦というわけ。これなら、ほぼ同レベルの馬が走るから、レースとしてキチンと成立する。 現在は市場取引馬のみというレースは存在しなくて、抽選馬と市場取引馬の混合戦形式になっている。ちなみに、この混合戦は、抽選馬・市場取引馬限定戦と呼ばれる。

マルガイ
外国産馬という意味。日本国内で登録、出走している、外国生まれの競走馬のこと。外国産馬が出走を許されているのは混合戦(国際交流戦を含む)だけだ。 GIレースで外国産馬がエントリーできるのは、国際交流戦の安田記念、混合戦の宝塚記念、牝馬限定混合戦であるエリザベス女王杯、混合戦のマイルチャンピオンシップ、国際交流戦唯一の招待戦、ジャパンカップ、混合戦の有馬記念、などがある。競馬の国際化の流れを受けて、今後はさらに増えそうな様子だ。 これらのGIレースを観戦すれば、なぜ、外国産馬の出走が制限されているのかが分かるはず。理由は簡単、とにかく外国産馬は強いのだ。

マルコン
外国産馬混合戦の俗称。つまり、外国産馬が出走できるレースのこと。 外国産馬は、混合戦のみ出走が許されている。外国産馬は出場できるレースが限られているので、出てくる時はたいていヤル気満々。ただでさえ体格の優れた外国産馬が気合い十分で勝負にでるのだから、マルコンのレースでは並みの内国産馬じゃ太刀打ちできないことが多いのだ。

万馬券(まんばけん)
払戻金が元金の100倍を超える馬券のこと。たった100円だけ買っても1万円以上の配当がつくことから、こう呼ばれるようになった。 短く万券とか、マンシュ(ウ)とも呼ばれる。 ちなみに、ひとつのレースで単勝式、複勝式、連勝複式のいずれもが万馬券となったレースのことを、トリプル万馬券という。単勝、連勝ならともかく、複勝まで万馬券になるレースはそうそうあるもんじゃない。

見せ場(みせば)
レースに出走する以上、馬だってカッコイイところを見せたいと思うはず。もちろん、勝つにこしたことはないけれど、馬券を握りしめているファンにとって、一瞬でも勝負になるという期待感を抱かせてほしいもの。競馬場で「行け―っ」「そのままあっ」などと大声で叫ベば、負けてもストレス解消につながるわけだから。 「見せ場」とは、こうした場面のことを言い、「見せ場はたっぷりだった」とか「見せ場すらつくれなかった」というふうに使う。

見せムチ(みせむち)
ムチを見せるだけで(実際には叩かず)馬に気合いを入れること。

道悪(みちわる)
重馬場や不良馬場のこと。「―巧者〔=重・不良馬場をほとんど苦にしない馬のこと。 『重の鬼』ともいう〕」

無理づかい(むりづかい)
きついローテーションでレースに出走させること。 「無理づかいがたたった」「(この馬は)無理づかいがきく」というふうに使われる。

目イチの勝負(めいちのしょうぶ)
馬の状態や相手メンバーから見て、後先のことは考えず、どんなことがあってもそのレースに勝とうと、強気で勝負に出ること。勝負がかりとも言い、そういう状況でレースに臨む馬のことを勝負馬と呼ぶ。競馬新聞の記者などが取材に行っても、厩舎関係者がいつもと違って無口になったり、神経質になっている場合は、目イチの勝負のときが多い。こういう馬を事前にキャッチできれば、馬券で負けることなんてないんだけどなあ。

目黒記念(めぐろきねん)
かつて東京・目黒にあった競馬場にちなんでつけられた重賞レース(GⅡ)で、昭和32(1957)年に創設された。58年までは天皇賞、中山大障害と同じように、春秋2回行われていたため、すでに110回以上を数える伝統ある名物レース。 59年以降は春のみで、東京の芝2500メートルで争われる長距離のハンデ戦として定着している。ひと昔前は天皇賞のトライアル的な要素があったが、最近は一流馬の多くが、重ハンデを嫌って別定戦の阪神大賞典や日経賞、大阪杯を使うため、やや小粒のメンバーで争われるケースが多くなった。

メンコ
馬の覆面。耳覆いの付いているものが多く、音に敏感な馬に用いる。

持ち込み馬(もちこみば)
すでに妊娠している牝馬を日本に輸入し、その後、日本で生まれた馬。かつては外国産馬の扱いだったが、現在は内国産馬の扱いとなる。

もちタイム
該当する距離のレースで、その馬のもっとも速いタイム。

もちつき競馬(もちつきけいば)
毎年、師走(12月)に行われる競馬を称していう。 年末はどの厩舎も最後の勝負をかけてくるうえ、リーディングトレーナー争いも熾烈になるため、フルゲート近くの多頭数レースが続く。「もちつき競馬」のネーミングには、こうした慌ただしさが餅つきの忙しさに似ていることと、餅代を稼いで明るい正月を迎えたいという2つの意味があると言われている。

持ち乗り(もちのり)
調教助手が厩務員の仕事も兼ねることを指す。ラッド制、または調教厩務員制とも言う。 競馬社会では一般的に、調教の仕事と馬の日常の世話をする仕事を分けて、分業にすることで効率性を高めている。1人3役をこなす持ち乗りは、これとは逆に効率性には目をつぶっても、1人の調教厩務員が馬と一緒にいる時間を長くすることにより、さまざまなメリットを追求したもの。馬にとって、調教厩務員はいちばん信頼でき、頼りがいのある人間ということになるな。調教厩務員になると、担当馬に対する責任が重くなり、仕事の負担も増すが、それだけ得られるものも大きくなるわけだ。いわば、手間ひまを惜しまない馬づくりと言えるだろう。とくに関西で盛んに取り入れられ、競走成績が上がるなど大きな成果を出している。

持ったまま(もったまま)
レース中や調教で騎手が気合いを入れたりせずに、手綱を持ったままの状態のこと。

持っていかれる(もっていかれる)
狙っていたレース(賞金)をライバルに勝たれちゃうことではない。レース中や調教中に折り合いを欠いたり、目向きが悪いときなどに、馬が暴走したり、斜行したりするのを騎手が制御できない状態を言う。 レース中の場合、他の馬のインターフェアになると、騎手に制裁が課せられる。制裁は、戒告、過怠金、騎乗停止、裁定委員会にかける、の順に重くなる。 また、馬が暴れて騎手を落とし、空馬のまま走りだしてしまうことを放馬と言うけど、これがレース中だったら、馬券を買っていたあなたは賭けた金を全部持っていかれちゃうことになるぞ。

元返し(もとがえし)
100円の馬券を買ったら、払い戻しが100円、つまリオッズが1.0倍になることを、元返しという。

物見をする(ものみをする)
競走馬が、競馬場の歓声や自分の影、芝生の切れ目などに気をとられ、急に立ち止まったりすること。

もまれる
一般的には、苦労して鍛えられることを言うけど、競馬の場合は、レース展開で馬が密集状態になること。「馬込みにもまれる」というふうに使われる。 多頭数立てのレースで、しかも展開がスローで団子状態になったときに起こりやすい。とくにインコースで包まれたりすると、外に持ち出すこともできなくなり、結局、脚を余して負ける要因にもなる。大きなレースになればなるほど、混戦になる可能性は高く、もまれた経験のない馬は実力があっても予想外の大敗を喫するケースがある。

や行
安田記念(やすだきねん)
6月上旬に東京競馬場、芝1600メートルで施行される伝統の一戦。出走資格は4歳上。平成5(1993)年からは国際レースになり、外国馬が参加できるようになった。以前はハンデキャップレースだったが、GIレースに格上げされ、定量戦で行なわれている。この変更により、かつては「荒れる安田記念」といわれた同レースも、だいぶ落ち着いたイメージに変わった。同時に、国際戦になったことで、安田記念=最強マイラー決定戦といった意味あいが強まったと言える。

休み明け(やすみあけ)
休み明け(休養明け)とは、レースから遠ざかっていた馬が、実戦に復帰する最初のレースのこと。 久々なんて言い方もある。 この休養明けの馬を狙うのは、ある意味で賭け。というのも、休養がリフレッシュのためだったのか、骨折や故障の治療のためだったのかを見分ける必要があるからだ。リフレッシュ後の復帰なら、バッチリ狙い目だが、治療のために休養していたのなら、要注意。こういう場合、おおむね調整不足だし、様子見のために思いきり稽古をさせないことが多い。

家賃(やちん)
そのレースのレベルのこと「このレースは―が高い〔レースの他のメンバーが強すぎるので、好走は難しい〕」

家賃が高い(やちんがたかい)
レースに出走する馬たちの競走能力のレベルを表す。「オープンじゃ、家賃が高いから……」というように使う。条件馬が重賞に挑戦したりする場合に当てはまることが多い。もちろん、それなりに勝算があっての挑戦もあるが、能力的にみてどう逆立ちしても入着すらむずかしい馬が出走してくることも少なくない。とくに、ダービーをはじめとするGIレースともなれば、馬主にとって参加するだけでも名誉なことだけに、高い家賃をモノともしない無謀な試みが頻繁に行われる。

屋根(やね)
騎手のこと。「―が甘い〔=馬の能力を引き出せない騎手〕」

やや重(ややおも)
読み方が難しいこの言葉は、馬場の状態を指す用語のひとつ。競馬は野球あたりとちがって、雨が降っても中止にはならないが、当然、馬場の状態はお天気の日と変ってくる。水分の合有率が、30パーセント以上35パーセント未満の馬場を、重(馬場)と呼ぶ。やや重はそこまで馬場が悪くなる1歩手前の、水分含有率24パーセント以上30パーセント未満の状態の馬場。 芝コースの場合は、重ややや重になると、ターフの表面が滑りやすくなって、当然の如く、時計がかかるようになる。だけど、ダートコースになると話は別。やや重くらいだと砂地がキュッとしまって、かえってパサパサの馬場よりも走りやすくなるのだ。こういうダートの状態を足抜きがいい馬場と言う。だから、本来ダートがあまり得意じゃない馬が稽重くらいの馬場で、思わぬ好走をしたり、好タイムが出たりすることがある。ダートのやや重は要注意なのだ。

予後不良(よごふりょう)
レース中の事故などで故障した馬が、治療しても再起できる見込みがないと判断され、安楽死(薬殺)処分となること。いたずらに馬を苦しめないようにとの配慮からだが、競馬ファンにとって最も見たくない光景だろう。

よれる
レースや調教中に、まっすぐ走らずに、コースの外側へふらつくこと。息切れしているときに起こることが多い。

4白流星(よんぱくりゅうせい)
4白は、4本の脚に自斑(白いソックスを履いた感じ)が入っていること。流星は、1額から鼻の方向に流れている白斑(星が鼻づらのほうまで尾を引いている)を指す。

ら行
落鉄(らくてつ)
馬の蹄鉄がはずれ落ちた状態。

落馬(らくば)
落馬とは、レース中に騎手が馬から落ちること。ほとんどの場合は、その馬は騎手の落馬と同時に競走中止扱いになる。 落馬した騎手は、競馬馬の巨体に踏みつけられる危険に晒されることになり、実際、落馬が大きな事故を引き起こしたことも少なくない。

楽をさせる(らくをさせる)
厳しい調教と激しいレースの繰り返しでは参ってしまうので、レースとレースの間に調教の手を緩めることがある。これを「楽をさせる」と言う。一息入れる、なども同じような意味で使われる。 馬の体質にもよるけど、1度楽をさせて馬体が緩むと、再び万全の状態に仕上げ直すのに相当の時間を要する。もちろん、楽をさせることでリフレッシュを図るというメリットはあるが、体が絞りにくい冬場や、叩き良化型の馬などの場合は、なかなか馬体が好調時のものに戻らない。

ラップタイム
1ハロンごとの走破タイム。

ラチ
棚のこと。「内ラチ〔内側の棚〕」「外ラチ〔外側の棚〕」

良血馬(りょうけつば)
競馬はしばしば「血のゲーム」と呼ばれる。なにより血統が重要視されからだ。 良血馬とは、文字通り、血統の良い馬のこと。とくに母の競走成績が優秀だったり、兄弟姉妹(同じ母をもつ馬)に優れた馬が多く出ている馬を良血馬と呼ぶことが多い。

良馬場(りょうばば)
晴れの日が続き、馬場が乾燥している状態をこう呼ぶ。馬場の水分含有率は24パーセント未満。カラッと晴天の絶好の競馬日和にレースに出かければ、競馬場内の着順掲示板には、たいてい「良」のランプが燦然と光っているだろう。 良馬場だと、競走馬本来の実力が発揮できるので、予想検討する場合にも、わりとストレートな予想ができる。これから競馬に挑戦しようって人は、なるべく晴れた日のレースを狙ってスタートするのがオススメだな。

レコード
走破タイムの最速記録。コースごとの最速記録がコースレコード。レースごとの最速記録がレースレコード。 似たような言葉にラップタイムというのがあるけど、これはスタートから1ハロンごとの時計のことを指し、レースの展開を読むための記録としての意味合いが強い。

裂蹄(れってい)
競走馬の蹄が裂ける病気のこと。冬場に多く、一度かかると、習慣的になる。

連闘(れんとう)
2週続けてレースに出走してくること。

連対(れんたい)
1着または2着に入ること。通ぶりたいのなら連がらみなんて言い方もいい。 1着、2着になるってことは、すなわち連勝馬券の対象になるということ。 馬券を買う方にとっては、連対してなんぼであるから、レースで連対する確率を現わした連対率なんて数字が予想のときに重宝がられる。たとえば、ある馬が10戦したとする。その結果、戦績が1着が1回、2着が3回だった場合、連対率は4割ということになる。

ローカル開催(ローカルかいさい)
JRA競馬場の中で関東(東京、中山)と関西(京都、阪神)以外の競馬場で、レースが開催されることなどを主に指す。

ローテーション
馬が出走するレースとレースの間隔のこと。 馬主と相談しながらローテーションを組み、いかにベストの状態でビッグ・レースで戦えるように調整するかは、調教師の腕のみせどころ。とくにダービー、皐月賞、オークスといつたクラッシック・レースを目指す馬は、2歳の時から綿密にローテーションが組まれ、トライアル・レースに挑んでくる。しかし、やっぱり馬は生き物。ケガや病気や突然の調子落ちなんかの影響で、当初予定したローテーション通りに出走できない馬がほとんどなのだ。

わ行
輪乗り(わのり)
レース発走前に待機所やゲート付近で、騎手が馬の気持ちを落ち着かせるために、ゆっくり円状に歩かせること。




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