競走馬の生産の主な仕事が種付けと出産なら、育成とは生まれた馬を競馬場に送り出すまでの管理と教育を意味する。広い意味では、生産牧場で行う初歩的な馴致も育成だが、普通は本格的な馴致(初期調教)から始まって、ダクやキャンター、ギャロップなどの走法や、手前の替え方を教えたり、ゲートの練習をしたりする、入厩前の過程を指す。
育成牧場
生産牧場から1歳馬を引き受け、競走馬としての初期調教を専門に行う牧場。馬房と放牧地の他、調教用の馬場を備え、若駒の育成をする。
生産育成牧場
生産から育成まで一貫して行う牧場。大牧場でなければ無理。
ブレーキング
野生を破るという意味で、馴致のこと。普通、1歳秋から始められる初期調教を指すが、それ以前に牧場で行う初歩的な馴致を指しても使う。そもそも最初の馴致は、生まれた仔馬を人間の手でなでることから始まる。出産の4~8時間後の仔馬に優しく声をかけ、顔や、耳、たてがみ、首、背中、脚などを柔らかくなでてやる。
舎飼い
厩舎の中で馬を飼うこと。本来は広い場所で放牧するのが望ましいのだが、真夏の炎天下や、吸血昆虫の多い場所では、かえって体力を消耗させてしまうので、そうした時期には屋内にとどめた方がいいという考え。
昼夜取牧
厩舎に戻さず、昼も夜も放牧すること。そうすると自由に十分な運動ができて、精神的にもリラックスできる。ただし、1日に1回程度は厩舎に戻して、ケガや不調がないかを確認し、異常がなければまた放す。 飼い葉は厩舎に戻したときに食べさせる場合もあるし、放牧地に置いて外で食べさせることもある。また、真夏の暑い時期には、日射しの強い何時間かは厩舎に入れて、それ以外の時間は放牧する場合もある。
ホーラ
馬に話しかける言葉。ホーラは馬をとどめようとするときの呼びかけ。「ホーラホーラ」と声をかけながら近づいたり、あるいは馬上から呼びかけたりする。逆に動き出すときには「サー」という。よく時代劇などで耳にする言葉では、「ドウドウ」で「止まれ」、「シッシッ」で「行け」という呼びかけがある。
牧草刈り
夏場に馬の飼料となる牧草を刈り取って貯蔵すること。収穫の時期は2回あり、6~7月に刈り取るものを一番草、9~10月に刈り取るものを二番草という。牧草はトラクターで刈り取り、貯蔵用の建物に運び入れる。1年分の飼料を蓄えるのだから量も多く、牧易ではこの時期、労働力を必要とする。そのためアルバイトを雇うことがよくある。
投げ草
北海道の場合、冬場は雪におおわれて草もないので、馬はあまり動きたがらない。そこで放牧場のあちこちに干し草を置く。すると馬は草のある場所へ移動しなければならないので、運動不足解消に役立つという。
二元育成
フェデリコ・テシオが創始した育成方式。生まれた仔馬を秋には南の地域の牧場に移して育成し、1歳秋に調教厩舎に連れてくるという方式。
三元育成
シンボリ牧場の故和田共弘氏が創始した育成方法。北海道で生まれた仔馬は当歳秋に岩手県の牧場に移して育成し、2歳に干葉県の牧場に移し、競走馬時代はこの牧場と厩舎を行き来させて過ごさせる。テシオの二元育成になぞらえて三元育成と呼んだ。
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