体を守る骨のカルシウムは運動によって増加する

体の支柱、臓器の保護者

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動物の外貌は、主に骨格と筋肉がかたちづくっている。骨格には個人差があるが、通常、成人のからだはおよそ206個、馬ではおよそ205個の骨からなっている。 これらの骨格は身体の支柱として、あるいは内部の臓器を保護するものとして、大切な役目を担っている。さらに、骨は筋肉や腱の助けを借りて、その収縮と弛緩によって骨の接合部の関節を屈伸させ、複雑な動作や激しい運動にも対応できるしくみになっている。

外見上、骨は何の変哲もない乳白色の石のようなかたまりだが、からだのほかの組織と同じように生きた細胞の集合体で、成長・栄養・運動によって、絶えず変化している。また、骨の内腟には骨髄と呼ばれる造血組織(血液の源)があり、 一方で、骨はカルシウム貯蔵庫としてからだのあらゆる細胞の生命活動に必要な体液中のカルシウム濃度を一定に保つ、大切な組織でもある。骨の内部は、薄い板状の骨質を密に重ねた硬い緻密質と、これをスポンジ状に配列した軟らかい海綿質に区別され、ここでは絶えず骨の増生と破壊、カルシウムの出入りが行われている。

競走馬も生後間もないころは、骨の緻密質が薄く、海綿質の骨梁(支柱に相当する)も細く頼りない。 成長や運動によって、骨梁が力を支える方向に太くなり、緻密質層も厚くなって、激しい運動負荷に耐えられる丈夫な骨質に変わっていく。

宇宙飛行士の骨についての研究が話題になったことがある。無重力状態では骨に負荷がかからず太い骨梁が不要なため、貯えられていたカルシウムが宇宙ではどんどん便や尿中から流出してしまい、結果として骨梁が減って細くなってしまうというのだ。日常の生活でも、老人や長期入院患者などの運動不足からくる骨の病気として、同じような現象が問題となっている。

重力(荷重)が骨の正常な発育成長にいかに大切か、如実に示すことと言えよう。 競走馬のトレーニングにいろいろ工夫が凝らされるようになってきて、水泳トレーニングが注目を浴びている。水泳は浮力によって荷重がかからないため、肢に不安のある馬のリハビリには適しているが、通常のトレーニングでは水泳にかたよらないことも大切だ。

カルシウムは運動によって増減する
現代っ子は昔に比べてよく骨折すると、新聞やテレビで報道されることがある。栄養がアンバランスだったり、都市化によって遊び場が減った結果、運動量が減ったりしたために、骨がもろくなっているのだという。 では、骨が丈夫だとかもろいとかいうのは、どういうことなのだろうか。

一般にスポーツ選手は、骨が太くて丈夫だというイメージがある。事実、スポーツ選手の骨の中に含まれているカルシウムの量は、運動をしていない健康な人と比べて1.5倍だという。ただし、スポーツの種類によって骨のカルシウム含有量は異なり、水泳選手のそれは重量上げ選手よりも少なく、普通の人に近い。

また、同一人物でもカルシウム含有量は一定というものではなく、かなり変化する。宇宙飛行士が8日間の無重力状態で生活した後では、骨のカルシウムが23%も減少するというし、ベッドで寝たきりの人は130日で約20%のカルシウムが失われている。これは、運動などによる負荷が、骨のカルシウム量の増減に密接に関係していることを示している。

骨の変化は内部の構造にも表われる。骨の内部は、外から加わる力をいろんな方向に分散させるように、骨梁というやぐらを組んだような構造になっており、海綿状を呈している。運動量の少ない休養中の馬などでは、骨梁が細くなっている。逆に、現役の競走馬の骨梁は太い。

馬の骨のなかで体重の負荷が最も大きいのは球節部。生後8~9ヶ月で、球節部を構成する管骨のカルシウム量は急激に増加し、満4歳で最高値となり、その後減少していく傾向にある。内部では骨梁が融合して、コンクリートのような緻密な構造をしている。約500kgの体重をかけて疾走する馬の骨は、すばらしく発達した耐圧構造を備えていると言えよう。

ところが、サラブレッドのガラスの脚には、骨折が多発する。人の骨折は、運動不足による骨のカルシウム量の減少が原因であることが多いが、馬の場合、逆にカルシウムの過剰な沈着によって骨が硬くなりすぎたために、弾力性が失われて骨折につながることがある。

結局、骨折しにくい丈夫な骨をつくるためには、カルシウムとリンをはじめとし、微量元素をバランスのとれたかたちで摂取して、個体に合った適度な運動をすることが必要だと言える。
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