世界のおもしろ馬名の競走馬たちがレースを盛り上げる

世界のおもしろ馬名の競走馬たちがレースを盛り上げる

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少し前、中央競馬にカネツモルモットという馬がいた。 「加熱モルモット」。どうしてモルモットを熱くしなければならないのか、全く分からなかった。大方、研究所でモルモットをいじっている人が名づけたのだろうと思っていた。

ところが、聞くところによると、これは「金積もる、もっと」と読むのだという。これでは全く別の馬だ。 思い込みというのは恐ろしい。先年亡くなった向田邦子女史は、「荒城の月」の「めぐる盃かげさして」の部分を、「眠る盃―」と思い込んでいた。母方のおばあさんは、「ガスは電気だ」といって、濡れた手を丁寧に拭ってからガスの栓をひねっていた、という話もある。(向田『眠る盃』)

だから、以下にあげる馬名の解釈も、当方の思い込みにすぎない可能性がある。あまり信用しない方がよろしい。 イタリアに「バテル」という馬がいる。日本に来たラインゴールドの牡駒で、今年のイタリア3歳勢きっての実力馬だ。 欧州には(ユーゴスラビアだったか)、バテナイというサッカーの名選手がいて、この人は減多なことではバテない。

ところがイタリアのバテルの方は、どうもよくバテる。ゴール前にくると、差し込まれてしまう。イタリア・ダービーニ着、イタリア大賞二着、ミラノ大賞二着と、大レースではいつも一息足りない。安易な気持ちで馬名をつけてはいけないという典型的な例だろう。

かと思うと、オーストラリアに「タクサン」というせん馬がいた。コーフィールドCなどに勝った大物だが、腸捻転のため急死してしまった。ダクサンの弟に「ギョウサン」がいるという話は、まだ聞いていない。 代わってフランスには、「アメリカンストレス」という二歳の牡馬がいる。なんだか、ストレスが高じて選身症にかかりそうな名前だが、六月末のボワ賞(グループ3)を勝って二戦無敗としたように強い馬だ。今のところ、コースを逆に回ったりする素振りは見せていない。

イギリスでは、「スライトリーデンジャラス」という馬名に味があった。勝馬検討のときなどに、「デンジャラス」は「怖い」という意味でよく使われる。 つまり、馬名の意味は「ちょっと怖い」。この馬は英国オークスで二着に突っ込んできて、名前に偽りのないことを示した。アメリカはどうだろう。この国では、三万七十頭からのサラブレッドが毎年、新たに馬名登録されている。 一方には、二十万ほどの馬名が使用不可という状況がある。現在つかわれている馬名はもちろんのこと、過去十年間に使用された馬名も使えないので、こういう厳しいことになってしまった。

これでは、馬主は大変だ。ありきたりの馬名を申請したところで、ジョッキークラブにハネられるのがオチだろう。 そこで、heres your ticketような、変わった馬名の登場となる。「ほれ、あんたの切符」。これがどうして馬の名前なのか、理解に苦しむ。

If winter comesという馬もいる。「冬来たりなば」。そういいながら、この馬は七月のシープスヘッド・ベイH (グレード2)で二着に入るなど、ちゃっかり夏場でも稼いでいる。 ほかでは、Sunday payday(日曜日は給料日) という楽しそうな馬もいれば、occasionally monday(たまたま月曜日)といい張るのもいる。ウマなのにgato del sol(太陽のネコ)だとか、cat girl(ネコ女)、field cat(のらネコ)と名づけられて平気で走っている逹中もいる。

最後にひとつ、レースを紹介しておこう。南アでは、今年から二冠レースの体系が整備された。次の話は、その第一弾にあたるリシュリュー・ギニーの模様である。 レースは、ごったの激しい展開となった。最後の直線に入って、逃げるフォリンアンバサダー(外国大使)を、ノーコメントが外に持ち出して追う。

このときさらに外へ振られた馬の騎手が仕返しに内へ切れ込むと、ノーコメントは行き場を失い、背後のピーストーク(和平会談)と接触、何か言いたい素振りを見せたが、ノーコメントのまま落馬。後続のヴェルサイユも落馬した。 なんだか、フランスあたりで行われた和平交渉のナレーションのようだ。「外国大使」の独走で幕を降ろしたこのレースには、プリンスファイアボール、プリンスフローリムントの二王子をはじめ、シャンゼリゼ、ポエティックといった、しゃれた名前の馬も出走していた。

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